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第183話 カエル王
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――『みたらし』、なに咥えてんだ?
パパさんが、オレが咥えたモノに気付いて散歩をストップする。
オレが咥えていたのは、さっき道で拾った、全長二十センチ程のぬいぐるみだ。
それは、頭に王冠を冠った緑色のカエルだった。
こいつはカエル王、ケロっ太!
ケロケロ王国を治めるケロっ太王は、度重なるケロール帝国の侵略に対し……飽きた。どうでもいいね。
パパさんは悩んだ挙げ句、カエル王を近くの公園のベンチにそっと置いた。
途端に、近くで遊んでいた幼稚園児が走って近寄ってくる。
――ボクのゲコリン! ワンちゃんが拾ってくれたの?
――おや、キミのかい? 道に落ちてたんだ。持ち主が見つかって良かったよ。
――ありがとう、ワンちゃん!
幼稚園児はオレをひとしきり撫でると、カエル王を抱え、走って戻っていった。
いいことすると気持ちいいな。
見るとパパさんもニコニコしていた。
良かったな、お子様。
そして、カエル王の名前が一文字も合ってなくって、なにげに悔しい。




