第177話 旅するカリカリ 前編
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
TopYouTuber犬の『くるみゆべし』が食べていたというカリカリをパパさんが勢い込んで買ってきたが、匂いが合わなくてオレは食べなかった。
誰も食べないカリカリの大袋が一つ、リビングの隅に置かれることになった。
そんなとき、後ろの家の『ごまだんご』が市のハロウィン仮装大賞で優勝し、副賞として例のカリカリを貰ったが、やっぱり『ごまだんご』もこれを食べず、オレのところに回ってきた。
これでリビングに置かれた誰も食べないカリカリの大袋が二つになった。
そんなわけで、邪魔くさい大袋二つを誰かに押し付けるべく……いやいや、食べてくれる犬を求めて、パパさんとオレは、車で市内を運転中なのでした。ハハっ。
――どうでしょう、『ハナ』ちゃん、食べますかね。
――うちの子、何でも食べるんで、イケるんじゃないですかね。ほら『ハナ』、どうだ?
『ハナ』ちゃんは食べなかった。見向きもしなかった。
――ありゃ、申し訳ない。ダメっぽいです。
――あぁ、お気になさらず。じゃ、私たちはこれで。
どんまい、パパさん。
そして次の家へ、レッツゴーだ!