第167話 新米
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
ウロウロ、ウロウロ。
オレはさっきからリビングとキッチンを行ったり来たりしていた。
いやもぅ匂いがさ、メチャメチャいいんだよ、これが。
米が炊ける匂いってやつ。
でも、なんでだろう、いつもより匂いが濃い感じがするんだ。
お? 音が変わった。
炊飯器から出るシューシュー音が、かなり大きくなってきたぞ。
ガチャッ、ピー! ピー!
炊けた!
ママさん、炊けたよー。
オレはリビングでTVを見てるママさんのところに行く。
――少し蒸らすから、もうちょっと待ちなさい、『みたらし』。
はーい。
ウロウロ、ウロウロ。
――はい、どうぞ。これが新米よ。
約十分後、オレは苦笑するママさんが握ってくれたオニギリをパクついた。
美味い、美味い! これ、美味いね!
おじいちゃん、おばあちゃんの家から貰ってきた新米とやらは、いつもの米より甘くて美味しかった。
三十キロとやらで二人と一匹、どれだけもつか分からないけど、結構袋が大きかったからな。
しばらくはこの新米を堪能できるだろ。
これはご飯が楽しみだ。
良かったぞ、オレ。
そして新米の甘さにオレは大興奮する。