第156話 続・サービスエリアにて 後編
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
下り線にもドッグランはあるらしい。
オレたちがそこで遊んでいると、不意に若いお嬢さんに話しかけられた。
――すみません、どこかでこのチワワ、見ませんでした? クリーム色で、首輪に『桃餅』って、名前が書いてあるんですけど。
お嬢さんがスマホの画像をこちらに見せる。
――この子、あれじゃない? 運転席に飛び込んできた子!
――あれかぁ! 会いました会いました。飼い主さんにお返ししましたよ?
――飼い主? わたしが飼い主ですけど……。
パパさんとママさんがハっと息を呑み、顔を見合わせる。
――探しに行きましょう!
『もももち』は、サービスエリアの外れの方に停まった車の中で、助手席に座ったお姉ちゃんに無理やり抱っこされていた。
ふふん。オレの鼻を舐めるなって。
こちらの視線に気付いたようで、中のお姉ちゃんが慌てている。
そこへ出発前のトイレを済ませたさっきのお兄ちゃんが戻ってきた。
こちらを見て、あからさまに挙動不審になる。
――迷子だったんで保護してたんですよ、ヘヘヘ。
お兄ちゃんは助手席のお姉ちゃんから『もももち』を取り上げると、お嬢さんに押し付け、あっという間に走り去って行った。
お姉ちゃんが悪態ついてたの、聞こえてたかんな。
――本当にありがとうございました。
――いえいえ、見つかって良かったです。
何度もお礼を言うお嬢さんを後に、オレたちも運転を再開した。
どんまい、お嬢さん。『もももち』と仲良く暮らせよ。
そしてまだ旅は続く。




