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第15話 名前
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
散歩していると、色んな人に声を掛けられる。
なにげに人気者なのだ、オレは。
みたらしちゃん。
うんうん、苦しゅうない。
思う存分、撫でるがよい。
みたちゃん。
みたちゃん?
まぁ、うん、そこまでは許そう。
だけど、あんまり省略しないでほしいな。
らっしー。
ラッシー?
あぁ、みたらしの『らし』か。
なんだそりゃ。
なんで素直に『みたらし』って呼ばないんだ。
おダンゴちゃん。
いやいや、おダンゴちゃんは無いだろう。
オレの名前は『みたらし』だっての!
ここまでいくと、意地悪でもされてるのかと思わないでもないが、オレをおダンゴちゃんと呼んだのは、うちの裏に住むお婆ちゃんだった。
うん、天然で間違えてるな、これ。
ま、食パンくれるし、よしとするか。
パパさん、帰ろうって。
疲れた?
何を言ってるんだ。
お散歩はこれからじゃないか。
さ、歩け歩け。
どんまい、パパさん。
そして今日も日が暮れる。