第143話 無人販売所
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
たまには違った道を行ってみようということで、見たことも無い道をズンズン抜けていくと、そこに小さな小屋があった。
野菜が並んでいる。
――無人販売所だ。
パパさんが首に掛けたタオルで汗を拭きながら教えてくれる。
無人販売所?
要は、店員さんがいないけど、設置された鍵付きBOXに代金を入れたら、置いてある野菜を持ってっていいですよってことだよな?
黙って野菜だけ持ってっちゃう人もいそうなもんだけど……。
そのとき、小屋の後ろの藪がガサガサっと動いた。
藪を割ってヒョコっと顔を出したのは、子犬だった。
パパさん! オレより小さいのが、しっぽを激しく振ってるぞ?
こいつが番犬やってるのか?
ど、どうする? どうする?
とりあえず、パパさんはお財布を忘れてきたらしく、今日は野菜を買えなかった。
――次また来たときに買ってやるからな。
おぅ、約束だぞ? パパさん。
そして、次来るときまでに、もっと大きくなっておけよ、ちっこいの!
オレもしっぽを振り振り、散歩に戻った。
また来るからな、お子さま犬!
そして、次来るときは、野菜を大量GETだ!




