第134話 焼き芋
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
オレは散歩中、いい匂いを嗅いだ。
ふむ、こりゃ芋だな。
どっかで芋を焼いているようだ。
オレは勢いよく走り出した。
リードを握りしめたパパさんが、慌てて追い掛けてくる。
ここ!
しばらく走って、オレは、ある家の前で立ち止まった。
庭先で、住人のお爺さんが七輪をパタパタやっている。
その上に乗る、三本の芋。
昔は落ち葉で焚き火なんてしてたそうだが、最近は街の条例で禁止されたらしい。
だから外で芋を焼きたきゃ七輪で焼けって?
風情も何もあったもんじゃない。
ま、味に変わりは無いけどさ。
オレはお座りして、シッポを振った。
パパさんが慌ててリードを引っ張るが、オレは頑として動かない。
芋を貰うまで、ぜーったい動かない!
住人のお爺さんがオレに気付く。
ワン!
お爺さんが苦笑しながら、焼き立ての芋を千切って、オレのところに持ってきてくれた。
上手い、上手い!
パパさんがお爺さんに平謝りしているが、気にしない。
上手いぞ、お爺さん。
ワン!
どんまい、パパさん。
そしてオレの腹は、しっかり膨れたぞ!




