第131話 その名はイガラシ
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
公園のベンチで休憩中、パパさんが昔の話をしてくれた。
中学生のときの話だっていうから、十年以上の話か?
あるとき、学校に犬が迷い込んできたらしい。
生徒たちで話し合った結果、こっそり学校で飼おうということになったんだが、第一発見者が偶然パパさんだった為、この犬は『イガラシ』と名付けられた。
いやいや、苗字がそのまま名前ってのはどうなんだ?
もしそのまま五十嵐家で飼うことになってたら、『五十嵐イガラシ』だぞ?
……ん? 『五十嵐みたらし』があるくらいだから、それはそれでアリなのか?
ま、そんなわけで、エサのこととかトイレのこととか、色々問題が起きそうなもんだが、そこは、給食の残りをあげたり、交代で散歩させたりすることでクリアしたようだ。
意外といけるもんだな。
さて、その『イガラシ』だが、最終的には、どこぞの家で引き取ってくれたそうだ。
にしても、そこまで学校側にバレずに無事乗り切ったってんだから、凄いね。
子どもたちも、よくぞ教師たちの目から犬を隠し通したもんだ。
鉄の結束力とでも言うべきか。
ふむ。
今日の話は面白かったぞ、パパさん。
さ、散歩の続きをしよう。