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第127話 魚売り
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴る。
どうやら誰か来たようだ。
パパさんとママさんが揃って玄関に行く。
当然、オレも付いていく。
玄関を開けると、そこにいたのは、白い発泡スチロール箱を持ったお兄さんだった。
発泡スチロールには、魚が何種類か入っている。
開口一番、魚いりませんか? だって。
怪しい。
このお兄さん、全然、魚屋さんに見えない。
しかも、微かに魚の臭いがおかしい。
多分、パパさんママさんは気付かないだろうけど、これは腐敗臭だ。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥ。
オレは低く、唸り声をあげた。
お兄さんが、パパさんママさんに気付かれないよう、そっと舌打ちをする。
今の舌打ち、見てたかんな!
パパさんがオレの様子を見て何かを感じたようで、キッパリ断ってくれた。
やれやれ。以心伝心、良かった良かった。
ま、パパさんが断れたのは、オレのお陰だけどな!
良くやったぞ、パパさん。
それはそれとして、なんとなくお魚を食べるお腹になっちゃったので、今日の晩ごはんは、お魚料理を所望する。