第121話 ティシュ
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
ずっと気になっていたんだよな、それ。
オレはそれをジっと見た。
箱から、ピョンっと白いヒラヒラが飛び出している。
パパさんやママさんが、鼻をかんだり、汚れたとこを拭いたりするのに使ったりしているそれは、BOXティシュというモノらしい。
パパさんが席を外している隙に、オレはティシュを口で咥えて、ソーっと引っ張った。
その場にペっと吐き出す。
よしよし、ってあれ?
一枚取ったのに、まだBOXのてっぺんからティシュがピョンっと飛び出している。
そんな馬鹿な。
だって、確かにオレの目の前にあるぞ?
もう一度だ!
スー、ペっ。
ピョン。
そんなことって!
……よし、オレが退治してやる!
何度コレを繰り返したろうか。
ようやくオレは、『ピョンっ!』を倒すことができた。
オレの周り中、ティシュのカケラだらけになったが、ようやく退治した。
良くやった、オレ!
ふと気付くと、オレの真後ろでパパさんがワナワナ震えていた。
お、パパさん! オレ、ティシュを退治したぞ! 褒めて、褒めて!!
結果から言うと、オレは、戻ってきたパパさんにこっぴどく怒られた。
どんまい、オレ。
それでもオレは退治したんだ。