第116話 逃走犬
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
お? そろそろ散歩の時間だ。
夕方、散歩の時間になったのでオレはリードを咥えた。
パパさんを探そうと家の中をウロウロしているとき、オレは窓が少し開いているのを見つけた。
不用心だなぁ……。
ワン!
……反応が無い。
パパさんもママさんもいないのか?
しょうがない、一人で行くか。
オレは少しだけ開いていた窓の隙間を鼻先で広げ、外に出た。
農道を歩き、公園に寄って、旧跡の側を通り、たっぷり一時間掛けて散歩を終えて帰宅したオレは、玄関前で家に向かって吠えた。
ワン!
帰ったよ!
……返事が無い。
あれ? 留守? お出かけ中かな?
しょうがない、ここで待つか。
オレは、パパさんママさんが帰ってくるまで、玄関前で寝ることにした。
寝てる最中、いきなり抱き締められたオレは、慌てて起き上がった。
あぁ、なんだ、パパさんママさんだ。
え? なに?
オレを探しに行っていたって?
すれ違いになっちゃったのかな。
そんなことより、オレは一人で散歩に行って来れたんだぞ?
褒めて、褒めて!
二人して泣くなってば、もう。
どんまい、パパさんママさん。
そして、一人散歩も、それなりに楽しいぞ。