第115話 手順
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
散歩の途中、ママさんと公園に寄ると、そこで遊んでいた子供がオレに気付いて寄ってきた。
触っていいですか? だって。
ちゃんと許可を求めてくる。
ほほぉ、ずいぶんと礼儀正しいお子さまじゃないか。
感心、感心。
オレはチラリとママさんを見上げた。
ママさんがニッコリ笑って、どうぞと答えた。
だそうだ。
さ、思う存分、触るが良い!
お子さまがしゃがんで、目線の高さをオレに合わせた。
おぉ! なんだなんだ、上からじゃないぞ。
お子さまがオレに手を差し出して、その匂いを嗅がせてくる。
お……おぅ。
敵……ではないな、うん。
次に、首の下や、耳の後ろを優しく撫でてくる。
おほぅ。
うん、悪くない、悪くない。
この子、できるな。
犬を撫でるプロだな!
ひとしきり撫でて満足したのか、お子さまはお礼を言って帰っていった。
いやいやいやいや、ビックリしたぞ。
ママさんもその手順の正確さに感動してる。
子供が生まれたら、あんな風に、ちゃんと犬を撫でられる子にしよう、だってさ。
いや、別にそんなもの目指す必要は無いと思うけど……ママさんらしいや。
落ち着け、ママさん。
そして今日もオレは撫でられる。