106/365
第106話 トンボ
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
夕方の公園を散歩してたら、近くをトンボが何匹も飛んでいるのを見かけた。
オレはその姿を目で追う。
その目が、パパさんに向かう。
途中でバテたパパさんが、公園のベンチでグッタリしている。
仰向けに、のけ反るようにベンチに座って、目をつぶっている。
……寝てる?
そんなパパさんのオデコにトンボが止まるも、パパさんは全く気付いていない。
起きないなぁ……。
パパさんも動かない。
トンボも動かない。
ねぇ、そろそろ行かない?
ワン!
パパさんがベンチの上で、のけ反ったまま、目をパチっと開いた。
うぉ、なんか怪談みたいだ。
オデコのトンボが視界に入ったみたいで、次の瞬間、パパさんが大慌てで起き上がった。
それに合わせて、トンボが飛んで、どっかに逃げて行く。
余程ビックリしたのか、パパさん、息が荒くなっちゃった。
大丈夫、トンボはどっか行っちゃったよ。
さぁ、散歩の続きしよう。
どんまい、パパさん。
そして今日も日が暮れる。