10/365
第10話 予防接種
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
今日は朝からお出かけ。
パパさんが運転だ。
ママさんもお仕事がお休みなのか、助手席でニコニコしている。
嬉しいな、嬉しいな。
オレは後部座席を占領し、ジャーキーをかじる。
たまにしか貰えない、うまいヤツだ。
イカンイカン、ついつい夢中になってしまう。
にしても、うまいな、これ。
お、着いたようだ。
パパさん、ママさんが車を降りる。
さて、どこだ?
ドックランか?
まかせとけ!
降りると、目の前に広い建物があった。
仲間の吠える声がする。
みんな、苦痛の叫びをあげている。
え? どういうこと? どういうこと?
注射だ!
騙したな!
キャウーーン!!
オレは注射を終えて、また車の後部座席に乗った。
痛かった。
まだ、むちゃくちゃ痛い。
シッポを抱えて丸まる。
そんなオレの前に、またジャーキーが置かれる。
そんなもので、この怒りを抑えられると思うなよ!
……うまい、うまい。
まぁなんだ。ジャーキーに免じて許してやるか。
どんまい、オレ。
そして今日も日が暮れる。