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第六話 井伊谷仕置き

 井伊直親は焦っていた、武田との内通が露見していないと甘く見ていたのもあったのだが武田の忍びを使っているので大丈夫と過信していたのであった。


「すでに御屋形様より家老の小野に上意討ちの命が下っているだと!早すぎる、直ちに武田領に落ちねば」


「それでは間に合いませぬ、逃げている途中で追いつかれましょう、ここは機先を制し小野を討ち取るべきかと、あちらは大義名分が手に入り準備に時間をかけており油断しておりましょう、そこを突くのです、その後御屋形様に奸臣の讒言であると申し開きすれば許されるはず」


「確かにそうだな、動かせる手勢すべてと共に小野の屋敷に向かう、準備いたせ」


「はっ!」


 こうして直親の反撃が始まるのであった。



 家老の小野の屋敷は上意討ちのための準備で大忙しであった。直親を討つのを直前まで悟らせないよう兵たちは屋敷とは別の場所に密かに集めるように差配し家老本人は上意討ちであることをことさら示すように華美に着飾るようにしていたのであった。


 そこに息を切らして門番が走りこんでくる。


「ご注進!井伊直親の手勢が押し寄せましてございます!」


「馬鹿な!屋敷を見張っていた者たちは何をしているのだ、なぜ知らせをよこさぬ!」


「わかりませぬ、相手は小勢ですがこちらも兵を別の場所に移していますので屋敷にはほとんど兵がおりませぬ」


 やり取りをしている間にも直親勢は屋敷になだれ込んでそこかしこで剣戟の音がする。


 そして、直親が血に濡れた抜き身を持って現れた。


「小野よ、我が父の恨み、ここで晴らさせてもらうぞ」


「くっ!謀反人めが、返り討ちにしてくれる」


 しかし、多勢に無勢、準備万端で乗り込んできた直親勢に小野は討たれるのであった。


 だが直親勢は勝利の凱歌を上げることは叶わなかった、彼らは屋敷を包囲した徳川勢の前にことごとく討ち取られたのであった。




「この度の不始末、この直盛が一命を差し出して御屋形様やご当主様にお詫び申し上げます」


「此度の事は直親一人の企み、小野も根拠なく讒言を行い調べた結果直親の内通が見つかっただけの事、本意は次期当主を討ち幼い子を当主に立て御家の乗っ取りを企んでいたのが明らかになり申した。直盛殿には桶狭間でのお働きによりその忠義は御屋形様も認めております。直盛殿はこのまま当主を務めていただき井伊谷を安んじていただきたいとの意にございます」


「なんと、御屋形様、御当主様の厚遇に感謝いたします。して直親の子の処遇ですが」


 直盛がそう告げると直盛の親族で井伊家の後見をしていた新野親矩が口を開く。


「徳川殿、虎松は井伊家を継げる唯一の男子です、親の罪はあれど御屋形様に御赦免願いたく御口添え申し上げます」


「某も御屋形様にその事言上申し上げたのであるがかつて直親の父親を誅したときにも直親を結局赦免したのが此度の事に繋がったと御屋形様は思っておられる。このまま井伊家の跡を継がせるわけにはいかんとの上意です」


「なんと」


「井伊家の方は直盛殿の御息女に婿を迎えて家督を継ぐことにせよとのことでございます、異存はありませぬな、直盛殿」


「は、仰せの通りにいたします。して虎松は?」


「寺に入れるのが筋と御屋形様は申されておりましたが、それでは余りに不憫ゆえ、徳川家で引き取りやがては一廉の武将にせんと言上し御許しをいただきました。虎松が長じて武功を重ね井伊の名を上げることを期待しております」


「おお、なんと慈悲深きお計らい、直盛はじめ、井伊家は徳川殿に末代まで感謝もうしあげまする」


 井伊家の面々が元康に頭を下げここに井伊家の仕置きは終わった。



 いやほんとうまくいって良かったよ。武田に通じる不穏分子を排除してついでにお家乗っ取りを企む奸臣も除けた。徳川家うちも未来の四天王、井伊直政をゲットできた。大事に育てないとな。


 南陽坊の手下が直親に反撃を入れ知恵したり小野の見張りを始末したりいい仕事をしてくれた。これで後顧の憂いなく尾張侵攻もできるというものだ。


 信長の方だが美濃の一色(斎藤)から攻められかろうじて押し返しているがそれに同調する犬山城の織田信清もおり尾張をまとめ切れていない、こちらは信清を通じて一色家と誼を結び信長を挟み撃ちにする。次こそは逃がさず討ち取ってくれよう。


なおこの小説はフィクションであり登場する人物・団体・組織等は完全な架空の存在です。


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