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十五話 京を望む

なおこの小説はフィクションであり登場する人物・団体・組織等は完全な架空の存在です。

御意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

読んでいただくと励みになります。


感想等のご返事が出来ず申し訳ありません。


 美濃国 不破関 今川陣城



 今川義元の本隊は不破の関にて集結していた。この地は後の世になり関があった所として{関ケ原}と呼ばれていた。軍勢は本陣を桃配山という小高い所に敷き関を超えようとしていた。



 「貴殿が浅井長政殿か、好く兵を使い領内を纏めていたとか。公方様に楯突かねば良き大名であったろうに惜しいのう」


 「東海の弓取と言われし今川の御屋形様に賞されるのはこの身の誉れ、ここは潔く腹でも召しましょうほどに」


「それも誉であろうがそうはいかぬことになっての、そなたには申し訳もないことだが」


「それはいかなることで?」


 義元は長政に六角との間にて決まった事を告げた。


「では、某は浅井が再度裏切った時の為に生かしておくと、ですが某が言うのも何ですがいささか甘くはありませぬか?」


「そうかの?そなたに対してはそうであろうが浅井の家にとってはどうかの?」


そう言われると長政は黙ってしまった。これが長政を切り捨てて生き残りを図る浅井家にとって重い枷になり得るということに気が付いたのであった。


「浅井家が公方様や六角に背くことがあれば某の出番ということですか」


「左様、久政が背けば其方が浅井家後継として返り咲くことになろうな」


「そうならぬよう、祈っております」


「うむ、まあこの地に居るのは不味いということで我が領である駿河に来てもらうがの」


「それは構いませぬ、生かして頂けるのであれば文句があろうはずがござりませぬ、ですが家族は…」


「織田殿の妹御であったか、一緒に来てもらうのは構わぬ。妹御が良ければの」


「忝い、今川様の御指図を受けまする」


「うむ、其方たちのことは粗略にはせぬよ、儂の義息もとやすが見込んだ者ゆえな」


 こうして浅井長政とその家族、傍仕えの井口や海北らは駿河に向かうのであった。



それから数日を経て今川勢は淡海の海の南を進み観音寺城下へ到着。そこで六角勢と合流した。


六角と今川併せて5万を呼号してそのまま進軍、野洲を経て瀬田の唐橋を渡る前に陣を構えた。


「ここまでくれば京はあと少し。三好勢はどうしておる?」

「山科に集まっております。数は5万と号していますがどう見積もっても3万も居りますまい、動員は出来なくはないでしょうが丹波や紀伊等の敵に備えなければなりませんからな」


六角家の重臣の一人、三雲定持は甲賀五十三家の出で忍びの心得があり敵陣を探らせていた。


「重畳であるな、気が散っては落ち着いて戦もできまい、我らはゆるりと攻めようぞ」


 義元の言に頷く諸将。


「公方様ももうじきここに来られる、それならば士気もさらに上がろう程に」


 数日後朽木谷より高島より淡海の海を渡り瀬田に将軍義輝が到着した。そうして軍議が始まった。

まず将軍から口を開く。


「皆の者大儀である。余を害そうとした三好の賊徒は山科に陣を張っているそうだが我らの兵は精鋭、必ずや賊共を討ち果たすであろう。其々励むように」


「ははっ」


 軍議が始まり陣立てが進んでいるところに使番がやってくる。


「松永弾正殿が参じられました」


 上席に居る義輝の顔が曇る。三好家を見限った松永を許しはしたが内心は複雑な物を持っているのが皆に伺われた。


「松永弾正参上いたしました。御所様におかれましてはご機嫌麗しく恐悦至極にございます」


「弾正、久しいの。其の方が参陣したことうれしく思う」


「はっ、某が正道に戻ることをお許し頂き感謝の極み、又僭越で御座いますがお知らせしたき儀がございます」


「ほう、何かの?」


「はっ、言葉よりも実際に目にして頂きたく同道していただきました、お入りくだされ」


 松永の声に呼ばれて幔幕の内に入ってきた人物に一同驚きを隠せずにいた。


「覚慶、生きておったか」


「兄上、三好家により討たれるところ松永弾正の手引きで隠れて難を避けておりました」


 そこに現れたのは義輝の弟で仏門に入っていた覚慶であった。永禄の変の時三好家より松永に殺害するように命じられていたが松永が打ち取ったと見せて密かに匿っていたのであった。


 感動の再開を喜んだ義輝は上機嫌で松永弾正を労った。


「弾正我が弟を助けてくれたことは本当に目出度き事。感謝するぞ」


「はっ、これにて我が忠誠が公方様に在ることを示すことが出来、某も感激しております」


 こうして幕府軍は士気が上がり山科へ進軍した。



 越前 一乗谷 朝倉館


「浅井も口ほどに無いですな」


 大野郡司朝倉景鏡が口を開く。それを見て露骨に顔を顰めたのは敦賀郡司の朝倉景恒である。

両家は景恒の兄が景鏡と戦で大将の地位を争い自害したため両家は不仲となっていた。かつて名将朝倉宗摘を擁した朝倉家も宗摘亡き後は振るわなくなっており当主義景は消極的な姿勢が目立った。六角を離れた浅井に対しても援軍を送ることなく結果として浅井が六角・今川軍に和議をもうしこむ事となっていた。


「公方様に詫びを入れて三好討伐に加えて貰うのがよろしいかと」


 安居の城主でもある朝倉景健が義景に進言する。


「う、うむ、其の方が良いかもしれぬな」


「反対で御座います!今更詫びても許されるとは思いませぬ。ここは三好方に応じ六角・今川を後ろから討つべきです」


 景鏡の言葉に思わず頷きそうになる義景、そこに敦賀郡司の景恒が口をはさむ。


「浅井が我らの願いを容れるとは思えませんな。浅井下野は狡猾な男です、この度は動かぬのでは?」


「な、奴は朝倉家に従属を誓っておるのですぞ我らが求めれば奴は動くはず」


「ついこの間六角と今川に小谷を囲われて長政を引き渡して居るのですぞ、ここで公方様を裏切れば討伐は間違いなし、そこまでの胆力はありますまい」


 景鏡は反論するが景健までにも反論されてしまう。


「此度は公方様に詫びを入れることとしよう、皆の者それでよいな」


 最終的に義景が決を下し朝倉は公方方に付くこととなった。


後顧の憂いも無くなり決戦が迫る。


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