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寝た男

作者: 中原辰次

しっかり、最後まで読んでください。

 時刻は深夜12時頃。私はベッドに横たわり、眠りにつこうとしていた。

 掛け布団を蹴飛ばし、動きやすく通気性のよいパジャマを着ている。無防備極まりない状態だ。体の力がだんだん抜けていき、夢の世界への船に乗りかけたその時、奴が現れた気配がした。

 いや、私は確実に奴が私を狙う音を耳元で聞いたのだ。瞬時に目を開き、体を起こした。 

 私はとっさに自分の首を守るように手を当て、辺りを見渡したが、暗闇の中では何も見えない。私はゆっくりベッドから降り、なるべく息をたてないように電気のスイッチに近づいた。         

      

パチッ……

 無機質な音が部屋に響き、私の目に光が戻った。しかし、奴は私の殺気を感知したのか、姿はない。私は部屋の死角に入り、眼球をギョロギョロ回す。クソッ……“仕事"で疲れているからか、明らかに集中力が落ちている。

 同胞が奴らに殺されている現状を思い出せ……神経を尖らせろ……いつ奴が私の喉元を撃つか分からない。もしかすると、もう既に背後に回られて……

 いや、あり得ない。うしろには誰もいない。余計な不安こそ無駄に息を荒くさせ、奴に隙を与えるだけだ。

 その時だった。私は今にも私の左腕を撃とうとしている奴を見つけた。私の脳はもうごちゃごちゃと何かを考えてはいなかった。ただ、目の前の敵を屠るという野生の本能が、私の右手を動かし、奴より速く敵を殺せるという自信があったから、早撃ち勝負に持ち込んだ。


 パァァン!!



耳の中で、破裂音がこだましている。左腕を見ると、少量の血がついていた。奴の返り血か、自分の血かすら曖昧だった。しばらくしてから、私は自分の身には異常が無いことが分かり、勝利を確信した。

 私は床に転がっている奴の死体を、正しいかもわからない方法で処理をした。


慣れているとはいえ、心はいまだに落ちつかない。奴らの恐怖が消えた訳ではないのだ。私はスプレータイプのミストを部屋中に撒いた。少しでも気休めになれば、と思ったのである。机にスプレーの缶を置いてから、部屋の電気を消した。そして、今度は薄い掛け布団を深く被った。ミストの香りが私の鼻を、少しだけ刺激した。缶にかかれていた効果を期待して、私は眠りについた。


 翌日、私は生きているようだった。もう一度、缶に書いてある言葉を読んだ。









「蚊がいなくなるスプレー」


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