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古代スライム駆除1

 ラルクは古代スライム駆除部隊を率いてエルフォード領都へと戻ってきた。

 住民の大半が避難した領都は殺伐としているが、それでも一部の住民は残っている。

 様々な事情で避難することが出来ない住民達だ。

 避難を指示されながらも自らの意思で避難しなかった彼等の大半は領民のために奮闘し、エルフォードを守るために再び戻ってきたラルク達に対して負の感情は抱いていない。

 それどころか、エルフォードの旗を高々と掲げ、領内の平穏を取り戻すべく、舞い戻った若者を目の当たりにして「自分達は見捨てられていなかった」と実感した人々の大半はラルクを歓喜の声で迎えた。

 しかしながら、一部の住民はラルクに対して怒りの眼差しを向ける者もいる。

 自らの意思で避難しなかった者はやり場のない感情の捌け口でしかなく、ラルクに向けられた理不尽な感情であることを理解しているが、それが理解できない幼い者の怒りは直接ラルクに向けられ、1人の子供が投げた小石がラルクの足下に落ちた。

 慌てて子供を諫める両親だが、ラルクは無言で笑みを見せ、片手を上げて子供を叱る親を制する。

 それを見守っていたミュラー。


「ラルクの領主としての度量は大したものだ」


 感心するミュラーにフェイレスは口を開く。


「ラルク様は主様がリュエルミラ領主として着任する前からお父上に代わって領主代行を務めておいでです。未だお若いとはいえ、領主としての経験は主様よりも長いのです」

「そ、そうか。領主としての経験値はラルクの方が上というわけだ」

「まあ、領主としての経験もそうですが、ラルク様のお人柄も領民に慕われる所以でしょう。実力と実績をもって領内を纏める主様とは違います」


 そこでフェイレスはミュラーを見た。


「エルフォードは小貴族ながら帝国建国以来の歴史ある家柄です。産業は農業や工業も並以下ですが、街道から外れた立地でありながら盛んな商業利益で領の弱い部分を補っています。エルフォードはリュエルミラに隣接しておりますし、無闇に敵を作りやすい性格が災いして国内に味方が殆ど居ない主様のことを鑑みてもエルフォードに恩を売っておいて損はありません」


 フェイレスの意見にミュラーも頷く。


「ああ、私とラルクが個人的に友人であることを抜きにしても友好な関係を結んでおきたいところだ。今回の一件もリュエルミラ側が一方的に損を被るのだが、これも将来を見据えての先行投資だと考えている。・・・・ん?」


 ふとミュラーが首を傾げる。


「如何しました?」

「フェイ、今サラッと私の性格がどうとか・・・そのせいで味方が居ないとか言わなかったか?」

「申し上げましたが、それが何か?事実ですから」

「うっ・・・うむ」


 主を平然とディスるフェイレスにミュラーは何も言い返せない。

 しかも、それが事実であるから尚のことたちが悪い。

 心に小さな傷を負いながらもフェイレスに反論できないミュラーは気持ちを切り替えてラルクに声を掛けた。


「さて、領都まで戻ってきたが、どうする?少し休息するか?」


 駆除部隊の指揮の全権はラルクに委ねられており、アドバイザーとしての立場のミュラーはラルクの判断を聞いてみる。


「皆さん疲れているでしょうが、直ぐに次の行動に移ります」

「具体的には?」

「先ずは情報収集です。古代スライムの現在位置を突き止めなければいけません」

「なるほど」


 そう言うとラルクはミュラーの傍らに居るフェイレスを見た。


「そこでフェイレス様のお力をお借りしたいのです」

「私ですか?」

「はい。フェイレス様はとても優秀なネクロマンサーだとお聞きしました。申し訳ありませんが、フェイレス様のお力で情報を集めてほしいんです」


 つまり、フェイレスのアンデッドを偵察に出すということらしい。

 フェイレスがミュラーを見ると、ミュラーは無言で頷いている。


「かしこまりました」


 フェイレスは5体のスペクターを召喚した。

 ジャック・オー・ランタンよりも素早く、情報収集に長けた上位アンデッドだ。

 放たれたスペクターを見送ったラルクは駆除部隊を見回して声を上げた。


「リュエルミラ派遣部隊の皆さん、お疲れのところ申し訳ありませんが、直ちに駆除の準備を進めて下さい。古代スライムの位置を特定でき次第作戦を開始します。おそらく時間的な余裕はありません」


 ラルクの指示を受けて作戦の主力となるドワーフ猟兵隊は移動式バリスタを組み立てて装甲馬車に取り付け始め、臨時に編成されたバークリー率いる冒険者の魔術師隊も駆除作戦の手順を再確認している。


 ラルクの言ったとおり、フェイレスがスペクターを放って半刻も経たずに古代スライムの位置が判明した。

 ミュラー達が接触した時には東に向かっていた古代スライムだが、現在は北東から領都に向かって近付いているとのことだ。

 

「進行速度が遅いので領都に到達するまでにはまだ2、3日を要しますが、真っ直ぐこちらに向かっています。おそらくは餌がある場所を本能的に察知したのでしょう」


 フェイレスの報告を聞いてラルクは決断する。


「敵が来るのをここで待つつもりはありません。直ちに出発して古代スライムを倒します」


 ラルクの号令一下、古代スライム駆除部隊は北東に向けて出発した。

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