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リュエルミラ会談2

 今回のリュエルミラ、ロトリアによる会談は3日間の日程が予定されている。

 初日は双方の条件提示、2日目は会談本番、3日目は予備日とし、2日目の会談で折り合いが折り合いがつかなければ3日目に流れ込む計画だ。

 会談に出席するのは双方2人であるが、他に会談の内容を記録する書記官が双方から1人ずつ同席する。

 

 館に到着したエリザベート等はローライネに来客用の貴賓室に案内された。

 リュエルミラには明後日まで滞在する予定であり、それまでの間エリザベートが滞在する部屋だ。

 部屋の中にはベッドが3台、来賓用の上等なベッドが1台と、同行者用に質素ながら上品なものが2台。

 同行者用のベッドは今回のエリザベート達の来訪に備えて用意されたものだ。

 加えて貴賓室の隣にある控室にもベッドが用意され、最低限の警護や付き人が滞在できるようになっており、護衛の領兵小隊の大半は館の外のリュエルミラ領兵宿舎に滞在する手はずになっている。


 エリザベートと貴賓室に滞在するのは護衛兼側近のシェリルと、今回の会談に書記官として出席する学者のマヤ。

 実はエリザベートはシェリルよりもマヤの方を領主の助言者として信頼している。

 若いながらも学者としてあらゆる知識に満ち溢れているマヤだが、そのマヤよりもシェリルを側近として重用しているのはエリザベートなりの考えがあった。

 今回の会談もその目的のためにシェリルを側近として出席させる思惑だ。


 エリザベート達が貴賓室に入ると間髪を入れずにステアがワゴンを押してやってきた。

 ワゴンの上にはお湯が入れられたポットと数種類の茶葉とティーポット、ティーカップのセットが数客、そして、皿に盛られた焼き菓子が乗せられている。


「お茶とお茶菓子を用意しました。会談開始までの僅かな間ですが、お寛ぎください。私は部屋の外で待機しておりますのでご用命の際にはお声掛けください」


 そう言い残し、頭を下げて退室するステアを笑顔で見送ったエリザベート。


「さっきのメイドといい、良い人材を揃えているわね。しかも、2人共になかなかの手練れながら、牽制してくる気配もなし、一介のメイドとしての役割に徹している」


 呟きながら用意された焼き菓子を1つ口に運ぶ。

 香ばしく焼かれたそれはやや甘みが強いが、長旅で疲れた体には心地良い甘さだ。

 加えてマヤが煎れてくれたお茶を一口。

 

「あら、美味しい。リュエルミラではとても良いお茶が手に入るのね。お茶菓子の方は誰かの手作りみたいだけど」


 それは高級品ではないが、品質の高いお茶であり、エリザベートはその上品な香りと味を満喫しながら会談までの一時を楽しんだ。


 エリザベートが到着して2刻後、初日の会談が始まる。

 会談の場として設けられたのは館の中の謁見の間。

 ミュラーに任せておくと執務室で会談を行うと言い出すだろうが、今回の会談はローライネが取り仕切っているのでそのような不手際は無い。

 今回の会談のために謁見の間に設置された会議机と書記官用の事務机が2台。

 謁見の間の正面を基点にして双方の領主と側近が左右に向かい合い、上座下座の序列を設けずに対等な立場であることを明らかにする設えだ。


 今回はミュラーがエリザベートに対して責任を問う立場であるが、会談に迎える立場としてミュラー、フェイレス、書記官のバークリーが先に会談場に入ってる。


「ゴルモア公国ロトリア領主エリザベート・ロトリア様をご案内しました」


 ミュラー達が会談場に入って四半刻弱、ローライネの案内でエリザベート、シェリル、マヤの3人が会談場に入ってきた。

 ミュラー達3人も立ち上がり、フェイレスとバークリーは軽く頭を下げた。


「遠路はるばるようこそ。グランデリカ帝国リュエルミラ領主のミュラーです。私には家名がありませんのでミュラーとお呼びください」


 軍隊式の敬礼でエリザベートを迎えたミュラー。


 これに対してエリザベートはカーテシー、マヤは頭を下げて応えるが、シェリルはミュラー達を睨みつけるだけだ。

 シェリルに睨みつけられてもミュラーは些かも動揺しないが、それよりも意外だったのは、通例では目上の者に対する礼節として用いられるカーテシーを淀みなく、完璧な作法で披露したエリザベートの方だ。


「お初にお目にかかりますミュラー様。私はゴルモア公国ロトリア領主エリザベート・ロトリアでございます。私も堅苦しいのは苦手なので、私のこともエリザベートとお呼びください。この会談が双方にとって実りあるものになることを切に願っております」


 その若々しい見かけによらず完璧な所作と余裕の表情で挨拶をするエリザベート。


(これは、手強い相手かもしれないな・・・)

 この会談はミュラーにとって初めての他国との外交である。

 今のところは敵国の領主であり、この場で処断されても文句の言えない立場でありながらミュラーに向けて微笑みすら見せる余裕のエリザベートにミュラーは気を引き締めた。

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