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帝都への道

 ミュラー達は無駄な手間を省いて帝都への道を攻め進む。

 進軍の途中にある都市で警戒すべき都市は攻略するが、それも最小限度に留め、帝都への進軍を優先する。

 その間、ミュラー達が何処にいてもローライネからの『愛の』補給物資が届けられるが、ラルクのみならず自ら武装商隊を率いてきたランバルト商会のランバルトにまでローライネは『愛の』メッセージを託していたことには流石のミュラーも辟易したものだ。


「さて、ここまでは順調に進んできたが、帝国には未だに我々を遥かに上回る戦力がある。むしろここまで順調だったということは我々をギリギリまでおびき寄せて叩くつもりなのかもしれない」


 フェイレス、バークリー等を前に語るミュラー。

 ここから先、帝都まで大きな障害となる都市はない。

 帝国は帝都、若しくはその手前でリュエルミラ軍を迎え撃とうとしているのではないかというのがミュラーの見立てだ。


「主様の見立てに誤りはありませんが、1つだけ異なる点があります」


 フェイレスの言葉にミュラーは首を傾げる。


「どういうことだ?」

「はい、この先1日程進んだ地点を目指して移動する集団があります。数は2千程の騎兵部隊、敵の遊撃隊と思料されます」


 ミュラーの表情が険しくなる。


「2千の騎兵、遊撃隊・・・エストネイヤ騎兵連隊か」

「はい、おそらくは」

「だとしたら厄介だな・・・」


 リュエルミラと帝国の戦いも最終局面を迎えつつある状況下でエストネイヤ伯爵の騎兵連隊が遊撃という立場を取っているということは、伯爵は帝国側の立場でありながら皇帝やスクローブ宰相とは一定の距離を取っていることの現れだろう。 

 それでいながらリュエルミラ軍の前に立とうとしているのは、帝国貴族として退くつもりは無いということであり、エストネイヤ伯爵の人となりを見てもミュラーに決戦を挑むつもりなのは間違いなさそうだ。


「なまじ1万の寄せ集めよりもエストネイヤ騎兵連隊の方が余程恐ろしい。フェイの死霊兵を投入するにしても、ある程度の損害は覚悟する必要があるな・・・」


 ミュラーは腕組みして考え込む。


「主様、いっそのこと私の死霊兵のみで対抗したら如何ですか?機動力に劣る死霊といえ、2千程度の騎兵ならば対応できます」


 フェイレスが提案するが、ミュラーは首を振る。


「確かにフェイの言うとおりかもしれないが、それは駄目だ。戦いの主力はあくまでも領兵隊であり、死霊兵ではない。我々が現在の帝国を叩き潰した後に誰が帝国を治めることになるかは知らないが、そのために戦っている我々が死霊兵のみに頼って勝利してもその後の統治が続かない。それに、エストネイヤ伯爵は策士であり、何を企んでいるのかは分からないが、今回の戦い、おそらくは帝国貴族として真正面から戦いを挑んでくる筈だ。そうでないと、彼方は彼方で我々を倒した後の立場に影響が出るだろうからな」

「・・・そうですか」


 ミュラーがそう考えているならばフェイレスはそれ以上意見しない。


「どちらにせよ、伯爵とはここで決着をつける必要がある。我々はこのまま進軍してエストネイヤ騎兵連隊との決戦に挑む」


 エストネイヤ伯爵との真っ向勝負を決断したミュラーは決戦の場へと軍を進めた。


 翌日、先に戦場に到着したミュラーは戦いの時を待つ。

 機動力の戦いならばアーネストの第1大隊の出番だが、第1大隊だけでは数が足らず、エストネイヤ騎兵連隊には対処しきれないので、必然的にオーウェンの第2大隊を中心として守備に重点を置いた布陣となる。


 やがてリュエルミラ軍の前に2千程の騎兵隊が姿を現した。

 掲げる旗はワイバーンに稲妻、エストネイヤ騎兵連隊だ。

 しかし、意外なことにエストネイヤ騎兵連隊は特に攻撃態勢を取るでもなく、リュエルミラ軍の正面に横隊陣を布いた。

 そのまま騎兵突撃を仕掛けてくることも可能だが、堅く守っているリュエルミラ軍に対し、騎兵の機動力や突進力を生かせる陣形ではない。


「伯爵は何を企んでいる?」


 ミュラーはエストネイヤ騎兵連隊をじっと見据えた。

 左右に布陣したエストネイヤ騎兵連隊からこちらに近づいてくる騎士が3騎、旗手と若い騎士を従えたエストネイヤ伯爵だ。

 その姿を認めたミュラーもフェイレスとマデリアを連れて前に出た。


「やあやあ、ミュラー殿。お待たせしたようで申し訳ない」


 まるで食事の約束に遅れたかのような気楽さと笑顔で話し掛けてくる伯爵。

 その立ち振る舞いに緊張など微塵も感じられない。


「エストネイヤ伯爵・・・。こんなことろでお会いしたくはありませんでした。正直、貴方とは戦いたくありませんよ」


 ミュラーの呆れ顔も伯爵は気にする様子もなく馬を降りた。


「まあ、戦いたくないというのは同感だ。こんなくだらない戦いで貴重な領兵を犠牲にしたくはありませんからな。ただ・・・」

「ただ?」

「退くつもりがないこともお互い様だ。そこでミュラー殿に一つ提案がある」

「提案?」


 伯爵から笑顔が消え、目が鋭く光る。

 そして伯爵は腰のサーベルを抜いた。


「ミュラー辺境伯に私と1対1の決闘を申し込む!」

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