第二話 流れる町で
巷でウワサのストロングガーディアン爺さん、通称ガー爺。
彼は対モンスター・対人戦で無類の強さを誇る伝説級の戦士だが、無礼な若者にキレてしまうのがタマにキズだ。
ガー爺「ふ~い、ついついカっとなって街を滅ぼしてしまった。次の宿はどこにするかのう…」
健脚・ガー爺。約4キロの道のりを30分程度で歩いて次の街へと到着した。
<商いとギルドの街・ヴェルディ>
ガー爺「ふむ、酒場にギルド。なかなか栄えておるようじゃな。宿屋は……」
きょろきょろとあたりを見渡す。
すると、一人の痩身の少年…少女のようにも見えるが、マントを被った若者が立ちふさがる。
少年?「すみません、お尋ねしたいのですが」
ガー爺「ぬ?ワシか?構わないが、ワシもこの街に来たばかりでな」
少年?「溢れ出る闘気…相当の手練れとお見受けします。あなたのような強い戦士であればご存知ではないですか?その…強さを金に変える方法を」
ガー爺「いや~?地道にギルドに入ってクエストをこなしたり、傭兵やって街を守ったりぐらいじゃないか?正攻法じゃぞ。基本」
少年?「傭兵…ですか。私はフェルト・アーロイといいます。申し遅れました」
ガー爺「ワシはガーディアン(守護者)じゃ、お前さんは男か?女か?」
年齢を重ねているため、初見でもズバズバと物を言えるのがガー爺の強味だった。
少年は嫌悪する訳でもなく、真顔で答える。
フェルト「私は人造人間ですね。つまり無性です」
ガー爺「なるほどな…だいたい事情は察したわい。とりあえず宿と飯が用意できる金が欲しいんじゃな?」
フェルト「はい。だいたいはそのようなところです。ですが飯ではなくメンテナンス用の生理食塩水やら薬剤やらですね、私に必要なのは」
ガー爺「わかった。ワシもちょうど宿と仕事を探しておる。しばらく一緒に行動するか?」
フェルト「はい」
フェルトはガー爺に深々と頭を下げる。
被っているフードがずり落ちないのが不思議だ。
ガー爺(ホムンクルスは管理者から離れられないはずじゃ。なのにこやつは単独行動をしておる。きっと何かしら訳ありなんじゃろう。悪い奴では無さそうじゃ、しばらく面倒みてやるとするかのう…)
ガー爺「まずは宿探しからじゃな。フェルトと言ったか?どこか希望はあるか?」
フェルト「人間は老体であっても性欲はあると聞きます。同衾ということになれば、猛獣のように襲ってこられるかもしれません。出来れば素体保護の為別室を希望します」
ガー爺「聞き捨てならーーーーーーーーーん!!!!!!仮にもガーディアン(守護者)と謳われるワシをケダモノ呼ばわりは無礼ではないかぁーーーーーー!?!?」
ガー爺の礼儀のない若者に対してすぐカっとなってしう癖が発動した。
通常の人間であればおそれおののき、おしっこをチビるレベルの闘気だが、人間ではないフェルトには、さして恐怖ではないようだ。
フェルト「ある程度の権威を持つ老人ほど、マニアックで変態なプレイを好むものだとマスターからは教えられました」
ガー爺「だああああああ!!!!お前のマスター偏屈すぎじゃ!!!!」
フェルト「違うのであれば謝罪します」
ガー爺「違うわ!!!ワシは50オーバーの女性に対してしか勃起せんわ!!!」
フェルト「ふむ……」
町人たち「「ひそひそひそ…」」
道の往来で激しい会話を繰り広げる二人。町ゆく人たちはやや遠巻きにそんな二人を眺めていた。
だいぶ忌避の眼差しで見られているが
はたして、無事宿に宿泊できるのだろうか?