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最高傑作  作者: キユウ トウキ
1/1

〜初投稿〜

酒の勢いで書いてみました。

秋という季節はなんと素晴らしいものか。暑すぎず寒すぎず過ごしやすくて最高の季節だ。

いや日中は汗をかくし、夜は中々どうしてロンTくらいは身につけていないと寝付けない。それでもやはりこの季節は好きだ。4月は進級進学就職と変化の季節であり、ちょうど今頃は各々の環境にも慣れ、気づけば一年の半分を迎えたことに嬉しさもありつつ物悲しさも感じる頃だ。喜びと寂しさのバランスがちょうどよい。

そして何より、五感全てで感じる秋というのがたまらない。春夏と天に伸びていた草木は少しずつ冬に備えてその葉の色をかえてゆく。それまでの彼らとは呼吸を変えているのが鼻と口を通じて分かる。人の少ない場所では生き物のさえずりが鳴り止まない。彼らはこれまでどれだけの季節を体験してきたのだろう。これからどれだけの季節を体験していくのだろう。肌に触れる当たり前の空気や気温でさえ、世界が変化をやめない生物であると実感する。


地上でさえこんなにも素晴らしく心地よいのだ。私たちを見下ろす空はどうだろうか。

街を見渡せる大神山【オオガミヤマ】の展望所で私は一人、ニタニタと笑顔を浮かべながら見上げる。するとまあなんという事か。今宵は雲が一つもない。なんと珍しい。道中、野猫にすら怯えていたというのに夜空に鎮座する満月に心を奪われる。

噂に聞いていた不良どころか健康オタクのおじさんにすら会うことが無く異様な気配はありつつも、まるでこの場所が世界の中心であるかの様な錯覚すら覚えてしまう。左手にあるベンチに座り、もっとこの空を眺めていたいと思い目をやる。

するとそこには既に誰かが座っていた。ベンチについてしまうほど長く艶のある美しい黒髪。身に纏っているのは白いワンピース。女性で間違い無いだろう。しかも若く見積もっても自分と同様10代後半、20代という線も捨て切れないがとにかく若い気がした。あくまで直感でしかないが。

彼女はそこで静かに街を眺めていた。

だがしかし待ってほしい。おかしいのだ。まだ夏の残り香があるとは言えこの季節、しかも肌寒さすら感じるこの時間帯にワンピース姿は何か変だ。しかも先程ここへ着いた時に彼女は居なかったし他に人がいる様子もない。

若い女性がたった一人でこんな場所へ何をしにやってきたのか。この景色を見たかった?普通は女性一人でこんな場所へは来ないだろうし、もしここからの景色がみたいのなら友人を連れてくるはずだろうにその様子はない。もしかして、いやまさかそんな筈はない。だってそうだろう?月明かりに照らされた彼女にはしっかりと影がある。幽霊に影があるなんて聞いた事がない。しかし私自身、直接幽霊を見た事がある訳でもない。故に影の有無は彼女が幽霊である事もない事も証明できないのだ。

生まれて初めて、冷や汗と呼ばれるものをかいているのを実感した。頭のてっぺんから足の指先まで血液が循環している自覚を持つことが出来たのは今晩最大の収穫だろう。生きている事って素晴らしい!いやふざけている場合ではない。野良猫に追いかけられて全力疾走した時以上に心臓が早く力強く脈を打っているのがわかる。

すると彼女が私に気づいた様で、顔を少しだけこちらに向ける。そして会釈をした。

ああなんて事だ。私は目の前にいる女性を勝手に幽霊扱いして勝手に怯えていた。なんと恥ずべき事だろうか。彼女が頭を下げたのは挨拶ではない。自分の世界に浸っている私に対して申し訳ないと思ったのだろう。そんな事はないのです。先客であるあなたを無視して勝手に浮き足立っていた私が悪いのです。こうべを垂れるのは私の方なのです。だからどうか自分が悪いと思わないでください。すると彼女は突然立ち上がった。違うんだ。この場を去るべきなのは私の方なのだ。あなたはここで、思う存分この景色をご覧ください。

私の身勝手な解釈を他所にポツリと喋りかける。

「ハルキくん、今度こそ迷わず殺してね。」

なびく黒髪と共に振り返った彼女は美しく、笑顔であった。透き通った白い夜空に一縷の箒星が流れていた。

好きなバンドは昔も今もジャパハリネットです。

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