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3分読み切り短編集

破った約束

作者: 庵アルス

「手、離さないでよ!」

「離さないよー」

「絶対だよ!」

「大丈夫だよー」

「約束だよ!」

「はいはい、わかったよ」

「ほんとにほんとだよ!?」

 そう、娘は念を押して、補助輪の取れた自転車のペダルに片足を乗せた。

 私が後ろでアシストバーを握っていることを再度確認し、こわごわと前に向き直る。

「せー、のっ!」

 地面を力強く蹴って、もう片足もペダルへ。

 よし、走り出しは上手くいった。

「パパー! 離しちゃだめだよー!」

「離してないよー」

 娘はぎこちないものの、きちんと漕げている。

 その後ろでアシストバーを、ふらつかないようしっかり掴んで走るのは、なかなか体力が必要だった。

「喋ってたら転ぶよー」

「喋ってないと怖いー!」

「大丈夫大丈夫、手ぇ離さないから」

「約束よー!」

「約束、約束ー」

 娘の走行は、だんだん安定していった。

 だが、手を離して漕ぐ決心が娘にできていないようで、なかなか解放されない。子供ならではの底なし体力と違い、私は疲れ始めていた。

 途中、休憩を挟み、何度目かのトライ。

 私はついに、業を煮やしてしまった。

「上手くなったー?」

「うん、上手に漕げてるよー」

「ほんとー?」

「ほんとほんとー。横見てごらーん」

「横ー?」

 娘は素直に横を向き────私は笑顔で手を振る。

 並走しているのだ。娘の自転車と、ダッシュの私とで。

 アシストバーから手を離しても問題ないと判断できたし、これ以上回数を重ねると、私の方がダウンしてしまう。

 娘は絶句していた。

「ほら前見て前ー」

「おぉっと!」

 急な姿勢の立て直しも問題ない。

 上出来じゃないか、と褒めた次の瞬間、

「約束破ったー!」

 娘は叫んだ。

「えっ!?」

「ママに内緒にしてあげるから、お菓子買って!」

 ⋯⋯厳しい!

 やっと乗れるようになった自転車が楽しいのだろう、娘はノンストップで自転車を漕ぎ、私はスーパーまでダッシュで付き合わされた。

2020/09/23

弟の方が先に自転車乗れるようになって、悔しかったの思い出しました。

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