転生先が辺境でした
第二話
死後の世界で神様と思しき老人と会話をして気が付くと、俺は推定生後二歳の赤ん坊になっていた。生まれた時から思考がそのままに継続するものだと思っていたが。そんなことは些末なことで、今一番必要なことは、自分は何処の世界で、どんな人物に転生を果たしたのかを知ることだろう。事の次第ではバッドエンドが約束されている可能性があるためだ。俺はどうやって情報を集めようかと考えていると、ドアが開く音がして、複数の足音が聞こえた。
「いけません奥様!まだお身体が万全でないのに…」
「母親なのに万全じゃなければ会えないのはおかしいわ!私にだって子育ての心得はありましてよ?」
そう言って、俺の顔を覗き込む女性が一人。もう一人の女性は後ろに控えている。おそらく目の前にいるのが俺の母親だろう。金髪碧眼、女神のような美しさを持つこの女性に見覚えがあった。
「リーナ様!?先程まで息が荒くなっていたでしょう!!安静にしないとマーリン様に言いつけますよ!」
「…もう、わかったわ。でも、少し抱っこすることは許してよね。」
と言って、俺の母、リーナが俺を抱きかかえた。その名前を聞いて自分が誰なのかを理解することができた。
「まー?(まさか…?)」
「よしよし、いい子ねラクス。このまま育って私たちの家を守ってね?」
ラクス・トルクマリン。帝国の辺境伯の一人息子にして、後の北方の悪魔と呼ばれる魔剣士。愛憎の果てに暴走をして、最終的に本来の主人公によって殺される悲劇が約束されたキャラクターだった。それを知った俺は、転生前にもっと特典を取っておくべきだったと心の底から後悔してしまった