レンと狐の新生活 その3
今さらですが一人称はララ=私、レン=わたし、リューナ=ワタシ と使い分けています。リューナに関してはまだ視点主で書いてない&決めてなかったのでごっちゃになっているかもです。
「それじゃあ、あとはよろしくね」
「はい! 私に任せてください」
「ココさん、ありがとうございました」
ララさんの雑貨店までやってきたココさんはこのまま管理局へ行くからとお別れをする。
お辞儀するわたしの隣で、ララさんは胸を張って「後は任せてください」とココさんを見送った。
「まずはレンちゃんの部屋に案内しよっか。お店と自宅用の玄関二つあるから気を付けてね」
「よろしくおねがいします」
ララさんはわたしとロニさんに「いくよー」と声を掛けて、自宅側の玄関のカギを開けて中に入る。わたしもそれに続いて、これからしばらく住むことになった家に足を踏み入れた。
ララさんは「まずは荷物を置いてからだね」と二階に上がり、ララさんの部屋の隣の部屋に案内された。
「ここが空いてる客間です。ベッドが二つあるけど、どっちを使ってもいいから」
「二つ?」
部屋には二段ベッドが置いてある。上段はここから見えないが、下段のベッドには可愛らしいぬいぐるみが並んでる。よく部屋を見てみるとそこら中に誰か生活する気配がした。
「客間って言っても、よく遊びに来る幼馴染二人のために用意した部屋なんです。だから色々残ってるけど気にしないで」
「わたしが使ってもよかった?」
「いいのいいの、あの二人が来たらその時に考えるから。わたしはお店のほうを確認してくるから何か用があったら階段横の扉からお店に来てね」
ララさんはそう言って、荷物持ちのロニさんを残して部屋を出た。
「ロニさん、背中開けるよ」
「開け方は分かりますか?」
「大丈夫」
しっかりとした会話のできるAI。わたしよりちゃんとお話しできるかも。
コミュニケーション能力に劣等感を感じながら、わたしはロニの背中を横から触れる。ボタンを押すとガチャンとロックを外す音の後、パカリと開く。
ロニのアイテムボックスになっている収納庫を覗くと大きな空間が広がっている。空間拡張に時空停止を備えたアーティファクトを初めて見たけど、不思議。
広い空間で手が届くとは思えないのに何故か届く。一体どういう理屈なんだろう。
わたしは四足で立ったまま微動だにしないロニさんに感謝しつつ荷物を取り出す。それを収納場所に収めていく。
「質問してもいい?」
「どうぞ、お嬢さん」
わたしが作業するのをじっと見ているロニ。その視線になんだか沈黙のままではいられなかった。
「ロニさんはララさんと付き合いは長いの?」
「そうですね。ワタシはララが生まれた時に作られました」
「赤ん坊のために?」
ロニさんはどうみても高級車一台、下手したら家も買えるロボットじゃないかな。ダンジョンのアーティファクトなんてロボットに積まないよ。Aランクくらいの冒険者なら輸送用に作るのかな。お父さんとお母さんに聞いたことないや。
そんなロボットを赤ん坊のララさんのために作っちゃうなんて、Sランクの冒険者って金銭感覚が……。ううん、これ以上は考えないでおこう。
「アルフォンスの親バカですね。サラが妊娠している時に黙って動いていたので、彼女もできあがってから知らされて大喧嘩したそうです」
「勝手に作ったら怒られるよね」
よかった。サラさんは常識のある人なのかな。お金を黙ってたくさん使ったら怒られるよね。
「ふふ、レンが思っている喧嘩とは違うと思いますよ。大金や貴重なアーティファクトを使って私は作られました。ですが、サラは大金を使ったことではなく、自分が何も関わっていないことを怒ったんです。これはララにも秘密ですけどね」
「どうして?」
「サラはアルのように非常識だと呆れられたくないのですよ、ララにね。けれど私からすればどっちもどっちです」
訂正。サラさんも金銭感覚がおかしい。わたしはそんな人たちの所に養子に入って大丈夫なのかな。
「レンも今のうちに覚悟しておく事をお勧めします」
「覚悟?」
「あの二人が帰ってきたら必ず何かしでかします」
赤の他人のわたしにそんなことされたら、申し訳なさで死んでしまいます。
どうしたらそれを回避できるのか、ロニさんにわたしは尋ねる。
「――どうしたらいい?」
「ララに相談するといいです。彼女は慣れてますから」
「わかった」
後で必ず相談しよう、わたしはそう決心した。
わたしがロニさんとお話をしていると、どこからか美味しそうな匂いがした。
「――! 忘れてた」
時計を見ると夕食を作り始めてもおかしくない時間だ。わたしもなにかお手伝いをしないと。
わたしはロニさんと一緒に部屋を出て、うるさくならないように急いでキッチンを探す。
「キッチンはこちらです」
「ありがとう!」
困ってるわたしにロニさんの助けが入る。なんて気の利くロボットなんだろ。
「ララさん、ごめんなさい! わたしも手伝います」
「あらら、ゆっくりしててよかったのに。でもありがとう」
急いで降りてきたわたしに、菜箸を持ったララさんがご機嫌にお礼を言う。
いけない。わたしから積極的にお手伝いしないと、家事を全部取られちゃう。
「レンちゃんは嫌いな食べ物はなかった?」
「大丈夫」
「そっかそっか。今日は冷しゃぶパスタだよー」
わたしはララさんに皿の場所を聞いてテーブルに並べ、そこにララさんが茹で上がったパスタと具を分ける。
「タレは何が良いかなー。レンちゃんは希望はある?」
「お任せしていい?」
わたしが作る料理とは違う……。とっても手馴れててオシャレ。
「じゃあ、いつもの味にしとこ。包丁は使える?」
「一人暮らしはしてたから大丈夫」
ララさんは「それじゃあ、お願い」と、冷蔵庫から取り出したプチトマトをわたしに手渡す。初めての場所でする料理に少し緊張しながら、猫の手でトマトを固定する。
「ララさんは料理慣れてるの?」
「師匠に弟子入りした時にね。師匠ってばそういう家事が面倒くさーい、って私にパスする人だったから。それから幼馴染にも作るようになって、色々勉強したんだ。」
師匠もあの子達も仕方ない子だよね、ララはそう言って笑う。それにわたしは「そうなんだ」って相づちを打って、切り終わったトマトをトッピングしていく。
「これでいい?」
「おっけーおっけー。こっちも……うん、美味しい」
作ったタレの味見をしてララは上出来と頷く。
「ララリナ特製キツネ印のうまうまだれー」
「おおー」
じゃじゃーんと効果音に乗せて、ララさんがパスタにたれを掛けて夕食は完成した。
「さあ、座って座って」
「うん!」
ララさんに椅子を引かれて私は席につく。目の前の美味しそうな食事に目を奪われていると、ララさんが「飲み物はお茶でいいかな?」と冷蔵庫を覗きながら聞いている。早く食べたくて仕方ないわたしは「うんうん」と頷く。
「それでは頂きます」
「いただきます」
少しはしたなかったとお茶を受け取ってから反省していると、ララさんも席について手を合わせる。わたしも遅れて、手を合わせフォークを手に取った。
ココさんとは違うタイプのお姉さんだけど、ララさんと一緒にいるとなんだか安心できる。夢中でララさんの料理を食べながら、わたしはそう感じていた。




