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ララと仲間ととある日常 その5

用事を終えた私とレンは『止まり木』の食堂へやってきました。携帯端末で連絡を取るまでもなくルシアとリューナの姿を見つけて、二人と合流し席に着きます。




「「かんぱーい」」


 仕事終わりのワインは最高です! 具沢山のコトコトじっくり煮込んだビーフシチューに、赤ワインの組み合わせは最強!


「ご機嫌ね」

「なにを当然のことを言っているのですか。高価な錬成品が売れてその上褒められて、熊公の臨時収入ですよ。お腹も財布も心もご機嫌に決まってるじゃないですか」


 私は大衆向けな渋みが小さく癖のない飲みやすいワインをぐいっと飲み干した。家では時々ルシアに付き合って私とリューナもお酒を嗜みます。ルシアほどではないですが、私もお酒には強いのです。


 残念ながらリューナはおつまみがメインですけどね。


「無駄遣いしてない?」


 うぐ、レンは痛いところを無自覚に刺します。確かに面白そうな素材を我慢できませんでしたが。いえ、違います! これは――――


「無駄遣いじゃないです! 未来への投資と言ってください」


 必死に弁明する私を放置して、レンはお魚を解体している。時々思い出したようにぶどうジュースを手に取って飲んでいます。猫の獣人は魚を綺麗に食べますが、これも種族特性なんでしょうか。食べるのが下手な猫というのも愛らしい気がしますが。


「レンちゃんもビーフシチューが食べたいですか?」


 私が頼んだ料理をちらちら見ているレンに尋ねると「いいの?」と聞き返す。妹というのもいいですね。


「はい、あーん」


 猫舌なレンのために少し冷まして、口を開けて待つ彼女に食べさせる。


「ん」

「おいしい?」


 レンは満面の笑みで頷き返す。お返しにと私にも料理を分けてくれる。


「仲がいいですね」

「リューナもやる?」

「レン! 余もどうだ!」

 

 賑やかですね。他にお友達がいないわけではないですが、やはりこの三人といる時が一番しっくりきます。


 私はどれが美味しいかとじゃれ合っている三人を眺めながらそんな風に思っていました。




「ららー。明日はどうする?」


 軽くアルコールが回っているのか、酔った口調でルシアは私に尋ねる。笑い上戸の気があるルシアはにひひと笑っています。


「いつもの採取ですか? 今日行ってきたのでいいですよ」

「なら明日は休日ですね」


 明日は日曜日です。レンも明後日から学校なので、一日自由な時間が欲しいでしょう。


 ウチの雑貨屋さんでは、日曜は午前だけ営業してる土曜日と違って一日定休日です。錬金術の日にするか、ルシア達と素材採取にいくか、完全なオフの日にするか。それはその日次第ですね。


「じゃあ、余はレンに色々教えるか」

「ほんと?」

「うむ」


 レンはルシアから体力作りや武器の使い方を学んでいる。リューナからは魔物や罠などダンジョンの知識を、私は素材に関する知識です。あとは……接客? 自由に使える時間が増えるので本当に助かってます。

 

 レンが将来どういう道を選ぶかはまだわかりません。私のお店の店員さんになってくれても、ルシア達と一緒に冒険者をしてもいいでしょう。はたまた全く別の道か。


 私としてはレンにはお店に来てくれると嬉しいなー、と考えていますよ?


「ワタシは本屋巡りついでにレンの役に立ちそうな本でも探してきましょうか」

「本屋巡りも良いなー。でもアトリエにも篭っていたい……。悩ましいよぉ」


 リューナも私も本はよく読みます。お互い冒険モノに恋愛、コメディと雑食ですからね。私の場合さらに錬金関連の本も読みますが。


「余にも、お土産たのんだ!」

「はいはい、面白そうなマンガがあったら買ってきてあげる」

「うむ、リューナのセンスなら問題ない」

「無駄にハードルを上げないでよ」


 困った顔でルシアに「期待し過ぎないでね」と言っていますが、リューナなら大丈夫ですよ。ルシアの好みって単純ですから。


 


 食事にお喋りにお酒に、久しぶりの外食を楽しんだ私達はお家に帰ってきました。


 元々私の一人暮らしを想定していた雑貨店。一応リューナとルシアが泊まれるように客室を作ってもらいましたが、今では二人の部屋になっています。急に一緒に暮らす事になったレンは私の部屋で一緒です。


 私の親が帰ってきたら、レンはそっちで暮らすことになるかもしれませんからね。


「家の拡張を考えた方が良いでしょうか」

「……拡張?」


 地下倉庫でロニの荷物整理をしている私はぽつりと呟く。


 申し訳なさそうにレンが聞きますが、拡張はいざという時にできるように考えていましたかね。もしかしたら住み込みの店員さんを雇う可能性がありましたから。


「みんなでこのままこの家で暮らすには少し部屋数が足りませんからね。レンちゃんがどちらの家で暮らすのかわかりませんから、お父さんとお母さんに相談しないといけませんね」

「……ごめんなさい」


 私は震えるレンを抱きしめる。両親を失ったばかりで私に遠慮するレン、ここが彼女の居場所なんだと優しく頭を撫でる。


「レンが謝らないでください。これは嬉しいことなんです」

「うれしい?」


 家を拡張することを負担だと思い込んでいるレンに、私は違うと諭します。


「家が大きくなるのは家族が増えるからです。私は新しくできた妹のために増築を考えているんですよ」

「――ぁりがとう,お姉ちゃん」

「はい」 


 そもそも部屋が足りなくなった原因はあなた達にもあるんですからね? 扉越しに覗いてるお二人さん?


「そんな目で見ないでくれ」

「ワタシはちゃんと宿を取りましょうと提案しましたが?」

「せっかくこっちで活動できるんだから余はララと暮らしたい!」


 まあ、わがままを言ったのはルシアに決まっていますよね。リューナが「一緒に住もう!」なんて言い出すはずがありません。


「二人は大人なんですからちゃんと費用を出してもらいますよ?」

「それはわかってるわ。一ヵ月しっかり活動できたから資金もそれなりにあるからね」

「むしろそのために働き詰めだったなー」


 二人が見ていた事に気付いたレンは私の後ろに隠れたままです。私は後ろ手でハンカチをレンに渡し、覗きの罰に残りの整理をルシア達に任せてレンと部屋に戻る事にしました。

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