04 めんどくさい模擬戦
不定期更新です。
別に僕はバトルジャンキーではないんだけどな…
うーん、適当に断って…いや、ここは受けておくか。
「わかりました。ただ、条件をつけさせてください。闘うって言っても下の闘技場でですよね?今は悪目立ちしたくないので仮面はつけさせてください」
「仮面か…それくらいならいいだろう!お前さんはまだ冒険者ではないからな!」
〰️〰️〰️
正直、引き分けがベストだ。
ギルドマスターの威厳を保ったまま、僕の実力を示すことが出来る。
別に、実力を示すのは登録してからではいい気もするんだけど。
だが、仮面をつけた以上自分のことは心配しなくていい。観客の中であいつは誰だと勝手に噂してくれれば新人冒険者に意識が向く奴はいないはず。
あのおっさんに負けるのは癪だ。
この戦いは父さん以外の人の実力を知るいい機会でもある。
これからの参考にもなるだろう。
めんどくさいからワンパンでいこうか…いや、殺すのはまずい。
連打からの寸止めでいこう。めんどくさいけど。
「準備はいいか?」
刃の付いていない大剣を肩に置いた状態で話しかけてきた。
『魔力量は平均的ですが魔闘技は目を見張るものがありますね』
「はい、いつでも構いません」
「それでは!両者はじめ!」
いつの間にかいる審判の掛け声と同時にドラルドが接近していた。
「ふっ!」
猛スピードで振り下ろされる大剣を最小限の動作で流し、少々魔力を込めて相手の腹に掌で振動を与えるように、殴る。
ボゴ!バゴ!ボゴ!グシャ!
おお、さすがに頑丈だな。
…今変な音がしなかったか?
今度は俺が目の前まで神速で接近し、目眩ましに、指パッチンで顔の前に小爆発の魔術を起動させる。
ボンッ!と相手の目の前で弾ける。
「な、なんだ!?」
これでしまいだ。持っていた大剣を奪いとり、合気道の要領で勢いよく背中から落とす。
そして、剣先を首元にピタリとつけ、終わりを宣告する。
「これで、終わりです」
「参った」
『お見事です』
背中から落ちたドラルドに声を掛ける。
周りを見ると空いた口がふさがらないといった状態だった。
それもそのはず。今の戦闘はまだ10秒もたっていない。
常人ならば目で追うことですら難しい。加えて両者共に本気を出していないのは明らかだ。気づいているかは置いといて。
「くっくっ…がっはっはっはっ!流石だ!皆!こいつはあの神子様だ!本人の希望で顔は見せられんが、これからホーンロッドで活動する予定だ!見つけたら仲良くしてやってくれ!」
「……え?神子ってあの伝説の…?」
「おおおお!!すっげえ!あのギルマスに勝つとか神子様やばすぎだろ…ってあれ?どこ行った?」
◇◇◇◇
俺は騒ぎになる前にゴリラの執務室に戻ってきていた。
「何あいつ!?神子様ってなんだよ!?」
『話の流れ的には貴方様のことを指すと考えられます。あながち間違ってはいませんし』
「それはそうだろうけど。けど、使徒って話なら知らないはずだろうし、ほかに僕を使徒たらしめる要因があるんだろう」
それにしても何やってんのあのゴリラ。悪目立ちしたくないのにみんなの前でよくわからないこと言って騒がせるし。
仮面を被っていたら何やってもいいと思ったら大間違いだと指摘したい。
「やっぱり先に帰ってたか!」
後ろから声がしたので振り返る。
「なにやってんですか!仮面を被ってなかったら大変なことになってましたよ!て言うか、神子ってなんですか!」
「まあ落ち着け、謝るから!よかったよかった。少しは壁が取れたか?」
「あ、すみません。馴れ馴れしくしてしまい…」
「いやいや、そのための模擬戦でもあったんだ。単に戦いたいってのもなくはなかったけど」
「そうですか…では、お言葉に甘えて」
そういう意図もあったのか。ただの考えなしのバトルジャンキーって訳ではないようだ。
『後付け感は否めませんがね』
でも結果的には上々な纏まり方だっただろうに。
「あ、そうだ。何ですか?あの神子ってのは」
「ああ、それか。…俺たち《緋色》のメンバーががそれぞれ重要な役職についているのは知ってるだろう?」
「はい。学園長をしている方もいらっしゃると」
「メルドだな。そう、でだ。お前さんの両親が普通の暮らしをしているのにもつながるんだ」
俺の、両親?
不定期更新です。