プロローグ1
GWですね
10連休では無いですが、帰省して思い付いたので書いてみました
転生したわけでも、召喚されたわけでもなく、
たまの休日に山登りをしていた私は異世界へと迷いこんだ。
所謂、神隠しというやつかな。
どうして異世界かと解ったかというと、目下アメーバのような軟体生物?スライム?に捕食されている途中である。
こんな状況日本どころか地球じゃあり得ないでしょ?
顔は無事で息苦しくはないが、溶かされているのだろう。体のあちこちが火傷しているかのように熱い。
ああ。ここで死ぬのか…さっきから助けてくれー!と叫んではいるものの、そろそろ意識を失いそうだ…25年、短い人生だった…
「う…眩しい」
あれ、生きてるぞ。何ださっきまでのは夢か。
起きたなら仕事の準備しなきゃなーと、思ったけど知らない天井です。どこだここは。
「おっ?目が覚めたようだな。」
声のした方を向くと美女が!というようなことはなく優しそうなひょろっとした白髪のおじさんでした。まあ、声でわかってましたよ。そういや異世界らしきとこでスライム?に殺されかけてたはず。
「すいません。ここはどこで、あなたは?」
「俺はジーノ。普通の町医者さ。お前さんは昨日死にかけでこのルーサンスの街で普通に評判のいいジーノ医院に運ばれたのさ。何か覚えているか?傷はなくなってるだろうが、まだ体力は回復してねぇだろ。」
ルーサンスとは聞いたことない街の名前に何故か通じる日本語。間違いないな。帰る手段はあるのだろうか。
それに、ほんとだ火傷のように爛れていた皮膚ももと通りだ。流石の異世界。現代医学では無理なようなことができるようだ。
「覚えているのは、森の中で急に透明な何かに溶かされかけて気を失ったってことくらいです。」
「そうか、お前さんは近くで仕事してた冒険者にたまたま助けられて運ばれたのよ。見たところ荷物もねぇし、金は無いよな。この街の人間じゃなさそうだし、残念だが治療費は体で払ってもらうぞ。お前さん名前は?」
どうやら助けてはもらえたけど治療費を返さないといけないようだ。まあ働き盛りの25歳だ。どうとでもなるだろうし、この世界にも興味はある。荷物とか何もかも失っているし、ここは名前以外忘れたことにして地道に帰り方を探っていこうか。異世界人の扱いがどんなもんか解らないし、暫くは慎重にしよう。
「名前は多分シンヤ…です。他は、ちょっと思い出せないです。」
うっ、頭が…なんて演技もいれながら、ここで働かせてくれと頼み込んだ私は、必死に勉強し、治療費を払い終えた後も暫く働かせてもらいこっちの医学と、常識を叩き込んだ。こっちの医学は魔法がメインだ。いいね魔法。
どうにか2年で習得し、ジーノさんとこを飛びだし、旅をしたり、魔法使いに弟子入りしたりと、様々な魔法や戦いかたなんかも学んだ。特に付与魔法に才を見出だした俺は現代知識も活用し、こっちへ来て10年が経つ頃には付与の賢者と呼ばれるほどになった。
この世界には魔王も勇者もいなかったが、魔物に脅かされたり、人同士で争うことも少なくない。私の付与魔法で付与された武器や防具に装飾品等の効果は評判がよく、飛ぶように売れたので一気に財を得ることができたが、35歳にもなると故郷の親を思い出すようになった。
就職前には一人暮らしだったが、親ももう還暦を超えているはずだ。いきなり音信不通だし、もう諦められているだろうけど帰ろう。嫁も孫もいないけど帰るべきだ。こちらでの地位や立場なんて別に雇われているわけでもないし、賢者等と呼ばれているのも称号みたいなものだ。
楽しい、あっという間の10年だった。本気で帰る方法を探すんだ。
それから1年。付与魔法で得た資金を湯水のように使い、付与魔法と儀式魔法を組み合わせ、理論上は帰る手筈は整った。
「さあ、帰ろう!」
足下の魔方陣は輝き、辺りを真っ白に染めた。
私、仲田信也36歳は日本に帰還します!