009
「痛ててて」
痛む後頭部をさすりながら元凶の野球ボールを取って、近くの箱にいれる。
投げ返せば二次被害ルートが見え見えなので箱にいれた。
「大丈夫雲気っち?」
「大丈夫かい雲気君? 相変わらずのミラクルだね。たまたま開けていた窓から野球のボールが飛び込んでくるなんて……」
「まあ何時の事ですよ」
そのまま鞄を開け今朝の事故の一件でつぶれた。
アンパンの袋を開けてパクリ。
そのままたわいない話をして食事をとり時間が過ぎていく。
「じゃあ先に失礼します。音意先輩」
「じゃあね! 琴音ちゃん!」
「では放課後この部室に集合だよ。そこから雲気君の家のねわかった?」
「了解」
「うん! 分かった!」
俺が扉を閉める寸前。
「なんで雲気君が美神さんと陰陽極運剣の事を……」
音意先輩が何かつぶやいた気がした。
◇
そして放課後。
いつもと同じく俺は不運の連続。
でも慣れたモノ。
天井の照明が壊れて欠片が頭に降り注いでも。
体育のドッチボールの玉がみぞおちにクリーンヒットしても。
落ちたシャーペンを拾おうとして教師に手を踏まれても。
それを受け身やら脱力、ノートでガードなどで最小限の被害におさえた。
だてに10年近く不運にあってはいないという事だ。
「雲気っちいこ!」
「ああいくか」
鮎川をつれてクラブ棟へ。
その間の細かい不運は省略。
相変わらずついていない俺。
いつもの事である。
「先輩入りますよ!」
「丁度いいところだね。入ってきたまえ」
「雲気君奇遇ね! 君がこの同好会に入っているなんて」
楓先生が何故か部室にいた。
「顔見知りのようだね。一応紹介するけどこちらは楓先生。病気の川田先生に変わって私達の顧問になってくれるそうだよ」
俺たちの学校では同好会にも顧問の教師がつく。
専任ではなく複数の同好会に対し一人だ。
「よろしくね。楓先生」
「さすが雲気君の彼女ね。まじかで見ると抜群に可愛いじゃない」
「えへへありがとうです。私と雲気っちはラブラブなのです」
「また誤解を受けるようなことを言うな! 友人同士をラブラブと言わん!」
「ふふふふ面白い子たちね。音意さんのいう通りだわ。じゃあ私はこれで、これらから大事な用事があるのでしょ? 私はほかの同好会にも顔出してくるわ」
それを言って楓先生は部室を出ていった。
「じゃあ僕たちも女狐退治に出発しよう」
「おーです」
杏家で変な事してなきゃいいが。
心配だ……。
「どうしたのかな雲気君? 家にエッチい本でも散乱してるの」
「してねーよ! ちゃんと定位置……って言わせるな!」
「お母さんが言ってたよ。ラブラブな人のエッチい本のセイヘキ? というのを調べるとくなれるんでしょ?」
「鮎川そういうのはまだお前には早い。俺が下種野郎だったら大変だったぞ」
「えーでももっと雲気っちとラブラブしたい!」
好感度が友人としては収まらないレベルに達してるな。
別に悪い事ではないが。
「青春だね! いちゃいちゃしちゃってやけるなもう」
「いいから行きますよ音意先輩」
「そうだねえい!」
俺の右腕に腕を絡ませる鮎川。
「えへへへまたラブラブしよ!」
「やけるね! 私も参戦と」
俺の左腕に腕を絡ませる音意先輩。
「やめろっていつ不運が来るかわからないから」
「私はへっちゃらだよ?」
「私も気にしないに」
「俺が気にするの。短時間ならともかく家まで結構時間かかるし、俺のせいで二人がとばっちい受けると俺が気にする」
「わかった雲気っち! じゃあ学校出る間ならいいんでしょ?」
「まあそうだが」
「仕方ない。じっくり雲気君の反応を見て君の不運体質の一端でも調べようかと思っていたが、短時間で手を打とう」
さいですか。
二人とも学校をでるまで腕を放してくれなかった。