008
「失礼します」
「よくきてくれたね。雲気君と鮎川君」
と小奇麗な部室の椅子に座っていた凛とした女子生徒。
二年の音意琴音先輩。
ショートカットのよく似合う中性的な顔立ちの美人さんだ。
音意先輩は俺たちの所属する同好会【幸運研究部】の部長的な立ち位置にいる人で、まだ正式な部ではない俺たちだが旧オカルト研究部の部室を許可を得て使わせてもらっている。
俺たちみたいな胡散臭い同好会が部室を使えるのはこの学校に多額の援助を行っている鮎川の父親の存在あってこそだ。
俺一人で交渉しにいっても相手にされなかったのに、鮎川が参加すると知るや否や即許可をくれた。
そんなこんなでこの部室によく皆で集まっているのだ。
「さて二人とも座ってくれたまえ。さて、雲気君。私に何を聞きたいのかな?」
音意先輩の言葉に思わず体がぴく。
相変わらず感がいい人だ。
「雲気っち、琴音ちゃんにお話あるの?」
「音意先輩、美神楓か陰陽極運剣というのはご存知ですか?」
「二つとも聞いた事がないね。なんなんだいそれは?」
いつもと変わらない軟らか表情だが、何故か違和感を感じた。
だがその時の俺はそれを気に留めなかった。
「俺の運気を改変するために、必要な物なんです」
「ふむ、訳アリのようだね深くはきかない。私の方でも調べておこう。それより雲気君。君の体についている私のしらない女の子の香りはなんだい? 鮎川ちゃんがいるのにまさか浮気かい」
「これは別に」
相変わらずの嗅覚の良さ。
音意先輩の嗅覚の良さはおりがみつきで嗅覚だけで相手の嘘と本当を見極められるぐらいだ。
「むう! 雲気っち! ラブラブ同士は浮気は駄目った母さんが言っていたよ!」
「お前意味わかってるの?」
「全然!」
満面の笑みでどんと胸を張る鮎川。
「まぁいいだろう! 今日は同好会活動を中止して雲気君の家に皆で行こう。ライバルがどんな子が見にね!」
その言い方だと鮎川だけではなく音意先輩のライバルだと聞こえますよ。
そんな野暮な事は言わないけど。
「うん! いく! 修羅場っていうんでしょ雲気っち!」
「お前本当は意味わかってんだろ!」
その言葉にキョトンとする鮎川マジで分かってねーなこれ。
「後雲気君私の方でも進展があったよ。君の不運を解消できる方法がね」
「ほんとですか?」
「まだ仮説の段階だがら詳しく言えないがね。期待てくれたまえ」
「よかったね! 雲気っち!」
「ありがとう二人とも」
「まだ感謝には早いよ雲気君まだ何度もいうが仮説の段階だからね。礼の言葉はその時まで取っておきたまえ。君は私の目的を遂げるための研究対象なんだからね」
「分かってますよ」
「じゃあお昼にしよ! 雲気っち琴音ちゃん!」
「そうだなっブベラ!?」
後頭部衝撃これは野球ボールだ。