020
「ふふふどうだい! 僕の陰陽極運剣は!」
と美神の胸から白い光を放つ一振りの両刃の剣を取り出す。
確か対極図では白は陽、その陽気の塊だから白いのか。
俺の体の中の鞘は黒といううことか。
次に俺の手に巻いた紐がはじけ飛んだ。
「痛って」
はじけ飛んだ紐の切れ端が目にはいったようだ。
もう通常運転かよ……
「いくです! 仙人様からもらった最強の剣です!」
と杏は札の一つを刀にかえて美神に切りかかる。
「ほらほらどうしたの? 僕はここだよ」
杏の連続斬撃にひらりひらりと彼に交わしていくが、これは圧倒的幸運あってこその芸当だ。
その証拠に美神は杏の剣の方向は見ていない。
そして無駄の多い動きだ。
ただ適当に体を動かしているだけで、幸運が杏の剣を避けてくれる。
「僕もいくよ! ほら!」
「ぐっです!」
美神の一刀で杏の腕が切り落とされくるくる回って、俺のそばに落ちた。
杏はその腕で何故か俺の服を掴む。
何か作戦があるのかもしれない。
「どんどんいくよ!」
一刀二刀三刀美神の斬撃で杏の体は、ズタボロに切り裂かれていく。
頃合いか。
「美神楓俺と一騎打ちだ!」
「そんな雲気っち危ないよ!」
「そうだよ雲気君不運な君が、幸運の化身を持つ相手に勝つなんて!」
「大丈夫俺には考えがあるそしてふたりとも信じてるからな」
「ふふん、面白い。ここまで無謀な勝負を挑むなんて。いいだろう受けて立とうじゃないか!」
美神は俺のゆっくり歩み寄る。
一方の俺は冷や汗が止まらない。
これは唯一の勝機という名の大博打。
成功するには杏、鮎川、音意先輩三人の協力がなければ成立しないだろう。
「ここでいいかな! 合図はどうするの?」
「杏頼む」
俺は杏に視線を飛ばす。
「了解です! 3つ数えたら開始です!」
「一つ」
後は杏にかかっている。
「二つ」
今朝の事忘れてないよな。
「三つ」
「杏‼!」
俺は今朝決めた合図を手で作り叫ぶと同時に俺の体内の陰陽極運剣の鞘を操り移動させる。
それと同時に美神は走り出す。
つられて鮎川と音意先輩もだ。
俺の意思を感じ取ったのか俺をつかんでいる杏の切り落とされ多雨でも動き出した。
「ふふん、大方二人がかりで僕の動きを止め止めようって魂胆だろ? でも甘いよ!」
俺は動かない。
これは遅くても早くても駄目だ。
俺の陰気の高まりに発生した陽気の幸運が美神の幸運を超えなければ成立しない。
「貰った!」
美神は俺の胸に剣を突き立てようとする。
「さっきの女の腕がええい! 邪魔だ!」
杏の切り落とされた腕が美神にとびかかる。
駄目だ剣の角度が悪い。
これでは俺の胸を突き破ってしまう。
「させないんだから!」
鮎川が美神の腰を掴む。
また剣の軌道が変化した。
惜しいもう少しなのに。
「その通りさ!」
音意先輩は美神の肩を掴んだ。
「ふふん、この程度の非力な力で僕を止められると? 僕は戦闘の幸運さえ味方につけているのさ。もらった!」
美神は動きを止めようと奮闘する二人を意に変えさず。
一気に俺の胸に剣を突き立てた。
この角度なら。
「雲気っち!」
「雲気君!」
「雲気さん!」
三人の悲痛な叫びが響き。
美神の剣は俺の胸の中心に吸い込まれるに突き刺さった。




