018
【逃げるのお勧めしないよ。すでに君以外の学生と教師の机に仕掛けをしてある。ではデモンストレーションだ】
そう校内放送がかかり指をはじく音が聞こえた。
「キャ! なんで智子が!」
「何で皆気を失ってしわくちゃになってるんだ?」
「なんなんだいったい?」
混乱する教室椅子に座りながら頭を突っ伏し干からびる生徒たち。
混乱し口々に声を出す運のいい生徒たち。
昨日の強盗の末路と同じだ。
【これで分かってくれたかな? この学校の生徒の幸運は僕の掌の上さ。さあきたまえ雲気霞君! それ以外の子は逃げようなんておもわないようにね! それぞれの教室から出たら出た人の幸運は強制徴収さ! そこの転がっている残りかすになりたいならおとなしくしているのが得策だよ!】
指の一弾きでクラスの半分の生徒がやれられた。
クラスの視線は俺に自然と集まる。
クラスの誰かが口を開く前に。
「俺いってくる」
止める者はいない。
教師もまだ来ておらず、出て言っても問題はあるまい。
そのまま教室を出て走り出す。
【そら出番だよ君たち。ちゃんと働いてくれたら君たちを虐げた人間全てを始末してあげよう。約束通りね!】
教室を出ると数人の気弱そうな顔立ちの男たちがボウガンを構え俺を出迎えた。
「杏頼む」
「了解です! お札さんお願いするです!」
杏はお札を掲げた。
すると札から白い光が放たれ次々に倒れ込む男達。
「次いくぞ!」
「待ってくださいです!」
廊下の角を曲がてすぐ頬の側面に何かがかすめた。
「やったこれで俺の復讐は!」
杏を見ると杏の胸に深々とボウガンの矢が突き刺さっていた。
それを見て俺は。
「杏、確かその服ステルス的な能力がるんだっけか? 普通にこいつに姿が見えているようだが」
「どうやらそうみたいです!」
「次はお前だ! どこを見てやがる! ってなんで生きてる!?」
「だって私死んでますしほら!」
スポンと頭を取って見せる杏。
それをみて男はばったんと泡を吹いて倒れてしまった。
「次いくぞ! 杏!」
「ハイです!」
そこからは杏の大活躍で、お札で私服の人々を無力化していく。
男が多かったが女性もいて年齢層は意外と若く俺と同じくらいから20代ほどとばらばらだ。
全員が何かしらの武器を持ち襲ってくるが慣れていないようで実に雑な攻撃で交わすのは容易だ。
連日不運を時に交わし、時に受けて被害を最小限にしてきた経験が役立った。
むしろこいつらの攻撃より不意に襲い掛かってくる不運の方が手強いくらいだ。
そしてクラブ棟へ着くとそこには鮎川がいた。
「雲気っち……」
「鮎川無事だったか今すぐ非難を――」
唇に軟らかい感触。
鮎川は俺の唇に自分の唇を重ねた。
俺は動けなかった。
鮎川にはいつもむき出しの好意を向けられてきたが、ここまでしたのは初めてだ。
混乱し動きを止めた俺に鮎川は。
「雲気っち! 好きです! 大好きです! 貴方のお嫁さんにしてください!」
と満面の笑みを浮かべた。
さっさと終わらせたいところ




