015
『さあ目を開けて君に大事な話がある』
深い場所に沈み込んだような静寂の世界に、どこかで聞いた声が反響する。
「なんだ一体うるさいな」
『起きたまえ君に話がある』
また声が聞こえる。
すると段々と意識がクリアになっていく。
『これは君の命と今後にかかわる事だ』
その言葉に俺ははっと意識が覚醒する。
「夢なのか?」
何もないただ広がる白の世界に俺は漂っていた。
『違うよ。これは私が君に伝えるために作り出した精神世界』
「あなたは」
そこには古神屋の和服の青年がいた。
『久しぶりって程の間じゃないから、本題に入ろう』
そういって和服の青年は俺に深々と頭を下げた。
『すまなかった本当に長い間』
「どうゆことですか?」
『君の不運は私のせいなんだ。私があんな剣を作ったばかりに』
「剣まさか……」
『察しの通りだ陰陽極運剣は、死ぬはずの運命だった私の妹の命を繋ぐために作り出した物なんだ』
「それと俺に何の関係が」
『君の体の中には不運を呼び寄せる陰陽極運剣の鞘が宿っているんだ』
どういうことだいつそんなことが。
『君が覚えていないのは、仕方ない赤ん坊のころに君の体に宿ったからだ』
「なんでそんな物を俺に! 俺がどれだけ苦しんだと!」
『その気持ちは私にいくらでもぶつけていい。だが聞いてくれ、陰陽極運剣をその身に宿すには条件がある。それは死せる運命にある者だ』
「つまり俺は陰陽極運剣の鞘が体に宿っていたから、生きているとでもいうのか?」
『その通りだ妹は陰陽極運剣を持って変わってしまった。完成した鞘を得るために私の命を奪う程に、だから私は死せ運命をもつ誰かに届くよう鞘を遠い未来に飛ばしたんだ。今の私は世界の狭間にしがみ付く思念体に過ぎない』
「じゃあ俺が陰陽極運剣の鞘を失ったら……」
『運命が君の命を即座に奪うだろう』
「どうすれば俺は生きていられる?」
『陰陽極運剣の鞘に刀身を入れて完全な形にするんだそうすれば死の運命を変えられるはずだ。もう時間はない明日妹は君の学校を襲撃し生徒全ての幸運と君の体内の鞘を奪うつもりだ。だから学校に行く前に私の店に来て欲しい。渡したいものがある』
「待ってくれ! どうやって俺の体内の鞘に陰陽極運剣の刀身を納めればいい?」
『それは私にも分からないだが、君の不運陰気は極限まで高まっている。それに対し妹は幸運陽の運気が極限まで高まっている。陰と陽は合わせ鏡どちらかが強大になればもう一方の強大になる、つまり君は最強の幸運を得る下地ができいるんだ』
「つまり俺と逆に陰陽極運剣をもつ美神は最大級の不運が降りかかるはずだってことか?」
『その通りだ。だから学校にく前に神仙様の使いとともに私の店に必ず寄ってくれ。そして陰陽極運剣について僕が知っていることを全て開示する』
頭の中に情報が流れ込んでくる。
陰陽極運剣の作り方から材料。
細かい仕組み。
詳細な論理。
そして陰陽極運剣の操り方、しかし俺に出来そうなものは、体内の鞘の口を方向と位置を変えることぐらいだ。
どうすればいいかさっぱりだ。
『頼む、楓を救ってやってくれ。君が生まれるまでこの町に狭間に住まい長い長い間君が生まれるのを待ち続けた。勝手な事を言っているのは分かっているだが、楓は私の最愛の妹なんだ。たとえその手で命を奪われても』
「分かった、何とかやってみる」
『ありがとう、だから最後に約束してあげよう。陰陽極運剣をそろえて鞘に納める事が出来たら、最大級の幸運が君を待っている。これは君の受け続け蓄えた陰気の対だ君は最高の人生を歩めるだろう。そして楓が二つをそろえたら君は命を失いこの世界は楓の意のままに操られる事になる。では頼んだよ』
俺はゆっくり瞳を開けた。