014
「ただいま! お母さんお父さんいる?」
自宅である駅前の高級マンション高層階の自宅に帰るなり鮎はそう言った。
「どうした鮎俺達に何か用か?」
彼は鮎の父鮎川鯛蔵されなりに大きな会社の社長でいかつい顔の中年であるが軟からかい表情を浮かべている。
「うんじつわね! 最近私変なんだ!」
「というと?」
「最近いつも雲気っちの事を考えちゃうし、雲気っちとずっと一緒にいられたらいいなっていちも思うの。雲気っちと話すと胸のとぎどきが止まらなくて頭がほわっとして幸せな気分になるの。これなんなの? これがラブラブなの?」
「ふふふふ、乙女ってるわね! 母さん好みよ!」
「そうだね確かに」
鮎の母である元モデルの鮎川恋も加わって二人そろて笑みを浮かべている。
「もうなんなの!」
「鮎は雲気君の事好き?」
「大好き!」
「ずっと一緒にいたい?」
「うん!」
「結婚したい雲気君と?」
「うん! したい! あっ……」
「どうやら気付いたようだね。それは鮎は雲気君を心の底から大好きってことだよ」
「そーゆこと! 体だけ大きくなって心配だったけどもう立派な乙女ね! さっさと告っちゃいなさい! ラブラブはその先よ!」
「そうだよ! いくら雲気君が運が悪くても俺達はOKさ! 鮎が幸せならね!」
「後はどうすればいいかわかるわよね?」
「うん! 雲気っちのお嫁さんにしてもらう!」
「じゃあこれに名前を書きなさい。雲気君の名前はここ」
恋は一枚の紙きれいわゆる婚姻届けの使い方を鮎に教える。
この国では男女ともに16歳で婚姻が可能なのだ。
「分かった明日雲気っちに書いてもらう!」
「そうか頑張りなさい! 雲気君なら鮎の婿として問題なんてないさ」
「そうね。早く孫が見たいしね!」
「こんやはご馳走ね! 鮎の旦那ゲットの前祝いよ!」
「やったー! ご馳走だ! なんでもいいの?」
「鮎は何が食べたい?」
「お子様ランチ!」
「じゃあ高級食材マシマシで! 作っちゃうわ!」
「じゃあ俺は唐揚げ!」
「私もからげ食べたい!」
「はいはいわかったわ」
告白は明日。
その日の為に十分な英気を養う鮎であった。




