選択の時
頑張る
朝二人と合流して朝食を食べる。
二人とも少しずつではあるが健康体へと近づいていく。
「二人には話しておくけど、俺の目的はスローライフを送る事だ。命張って冒険するつもりも無い。二人はどうしたい?」
「私はアトラス様のお側に仕えるだけです。
スローライフを送るのでしたらそのお手伝いをするつもりです」
「ユーリもアトラスお兄さんと一緒だよ?」
二人とも何の迷いもなく答えた。同時にこの子達を幸せにしなければならないとの使命感が湧く。
「家を購入するつもりだ。そこでゆっくり三人で暮らすか?」
「良いですね!アトラス様とずっと一緒に居られるだけで私達は幸せです!」
「ユーリも!幸せ!」
たかが襲われていた所を助け3日ほど一緒に旅をしただけなのに、この子達は俺に隷属までして尽くしてくれる。
「分かった。家を購入したら二人に大切な話があるから、念頭にだけ入れといて」
そう言うと俺は受付カウンターに向かった。
「アトラスさん、どうかなさいましたか?」
昨日の受付嬢だ。確か名前はリルさんだったはず。
「どうもリルさん、今日は不動産屋を紹介して欲しくて」
「ッ‼︎ アトラスさんこの町に定住するんですか!?」
「まぁ、そのつもりです」
「任せてください!アトラスさんの家探しはギルドで請け負います!最高の家を提供できるでしょう!」
リルさんのテンション上がり過ぎ何ですが?
「では、お願いします」
そう言ってカウンターを後にして二人のところに戻った。端的に言って絡まれてた。
「よう、ねーちゃん俺たちと遊ばない?」
「お断りします。アトラス様以外にこの身に指一本足りとも触れさせるつもりはありません」
「ユーリもアトラスお兄さんだけだよ!
貴方達なんて知らない」
「この雌奴隷風情が!調子に乗ってんじゃねーぞ!」
男達の内一番ガタイのいい男がアリシアを掴もうとした瞬間、男は吹き飛んだ。反対側の壁まで。
風魔法を爆発させたようだ。
「この!奴隷風情が!ひん剥いて犯した後ぶっ殺してやる!」
その言葉で俺の何かがブチ切れた。
長槍を抜き間合いを一瞬で詰めて男の頭に振り抜く、もちろん峰打ちだが。
ユーリの近くの男二人を無力化しアリシアに剣を向けていた2人を長槍で振り払う。
ユーリの手を引き銀の紋章がある左腕へと抱き寄せ、金の紋章がある右腕にアリシアを抱き寄せる。
「クズ共!今回はギルドの顔を立てて殺さないでおいてやる! 二度と俺の女に手を出すな!次は完全に殺す」
二人を連れてカウンターへと向かう。
アリシアとユーリはこちらを見て頬を赤らめる。少しずつカウンターに近くのに連れ頭が冷える。
そして... は!?何が俺の女に手を出すなだよ!どこのラノベの主人公だよ!
うわー!こっぱずかしい思いした!
いっそあいつら殺して八つ当たりしようか!
そんな物騒な考えをしていたがリルさんの声で正気に戻った。
「アトラスさん凄くカッコよかったです!
その子達凄く大切にされているんですね!」
「はい!アトラス様は最高のご主人様です!」
「ユーリもそう思うアトラスお兄さんは最高のユーリのご主人!」
「あはは、その恥ずかしいからね?
あんなの告白と何も変わらないからね?
それを人の多いギルドホールでやったんだよ?罰ゲームだよね!」
アリシアとユーリは赤面しそれぞれ告白と言う言葉をぶつぶつと呟く。
リルさんはニヨニヨとこっちを見る。
あぁそうだよ!アリシアもユーリも俺だけの俺の女だよ!悪いか!仕方ないだろこんなに可愛い双子が両方俺に尽くしてくれてるんだから!独占したくなるだろ!
俺は心の中で開き直った。
「そ、それよりも!リルさん物件見つかりました?」
「はい!いい所ありましたよ! ギルドの通りを左に5分ほど行ったところです!」
かなり近い所を見つけたようだ。
「お値段は?」
「アパートタイプの三部屋にリビング、キッチン、共同の井戸使い放題で金貨100枚です!」
「却下。金貨50枚ほどの物件は無いですか?」
「町外れの一軒家なら、畑付きで金貨30枚ですけど、ギルド遠いですよ?大体この街の相場が金貨80枚くらいなので、破格と言えば破格なのですが。
街までだいぶ時間がかかるので安いんです。」
「....そこにします。三人なら静かな所でゆっくり出来ますから」
リルさんはどことなく残念そうだった。
何で?別に遠かろうが仕事だからギルドには来るのに?
リルさんに案内され物件へ目指す。かなりいい建物だ状態は良好、平屋の一軒家で井戸が後ろにある。
契約を済ませて代金を支払い、晴れて住居を構えた。三人で掃除をして終わる頃には日は暮れていた。
仕方ないので簡易ベットに三人で寝る。
「床を一緒にするのは結婚してからなのになぁ」
「アトラス様大丈夫です。わたしは今日の告白受け入れていますから!いつでも夫婦になれますよ!」
「アリシア、ずるい! ユーリもアトラスお兄さんの全てを受け入れるよ!」
「じゃぁ明日二人にはバンプになってもらう。そうすればもう夫婦より強く結ばれる。
嫌か?」
「アトラス様喜んでなります!」
「ユーリも!アトラスお兄さんとずっと一緒!」
俺は二人を撫でながら意識を手放す。
この気持ちが愛なのかなぁ?
35歳DTサラリーマンから50年バンプとして生きたけど、初めての恋か。
よし、決まった。
二人にはスキルを使う、俺のスキル
"真名の解放者・トゥルーリベレーター"
天照大御神様が俺に与えた加護
真名を与える事によって自身のステータスを相手に譲渡する。
俺が弱体化する事で真名を与えられた者の能力は人間の限界を超える。
剣技や槍技は体に染み付いたものだから消えないが魔法攻撃や防御は目に見えて下がる初級魔法ですら回避しなければ危険だ。
真に信じれる者にのみ与えるスキル。
これは俺にとっての生死を分かつ選択なのだ。
そして決意した俺は意識を手放す。この子達が幸せになれる事を祈って。
ありがとうございます!