俺誕生!
サブタイトルツッコミ待ちでふ
森の奥湖のほとりにある決して大きいとは言えない一軒家には赤子の泣き声が響いていた。
「どうしたのかな〜アトラス。お母さん恋しくなっちゃったかなぁ〜。」
甘いとても優しい声が聞こえる。足音はこちらに向かって来るのがわかる。
俺は目を開けるが視界が完全にぼやけている。かろうじて声の主が金髪の女性である事だけはわかる。
女性は俺を抱き上げると、乳房を出し母乳をくれる。
前世の記憶があるためやましい気持ちになりそうだが、何せ目が見えないので何も感じなかった。
「ただいま戻りました。ティシニア大丈夫でしたか?」
授乳を受ける私と与える母を見て入ってきた男は柔らかな笑みを浮かべる。男はこっちに来ると母ごと私を抱きしめた。
「もう〜ロンド、アトラスのご飯の邪魔しないの」
「ははは、ごめん ごめんはやくアトラスと
ティシニアに会いたくてね。焦ってしまっ
た」
ロンドと呼ばれた金髪の男はすごく楽しそうに笑っている。恐らく父親だろう、とても温かい家庭だ。前世の家庭より温かいと思う。
そんな恵まれた家庭環境をくれた天照大御神様には感謝を忘れてはいけないな。
そんなこんなで私は5歳になった。
両親は母がヴァンパイアで父が人間の様だ。
父と母は互いに愛し合い人間からもヴァンパイアからも離れた。二人だけでこの森に来て
湖のほとりに家を建て暮らしている様だ。
父は母の眷属として母が死なない限り歳もとらず死なないらしい。
だが問題が無い訳ではなかった。それは二人がこの森に入ってがら200年子が出来なかった様だ。
その為2人は俺を猫可愛がる、いやでは無いが恥ずかしい。だがとても穏やかで楽しい生活だ。
「何でお母さんとお父さんは出会ったの?」
子供の同然の疑問両親の馴れ初めである。
「実は父さんは昔冒険者をやっていてね。
国王の依頼で討伐任務を遂行していたんだ」
「それがね〜アトラスちゃん聞いて〜
国王の討伐依頼は私達ヴァンパイアだったの〜人間なんて襲って無いのに〜」
母さんはぷく〜と頬を膨らませる。
この人一々可愛いな。
「それで?」
「父さんは最初ケルベロス討伐と聞いて行ったら、ヴァンパイア達の村でおかしいと思って王国兵に聞いたらヴァンパイア達を狩るとか言いだしたんだ」
「で〜ロンドは王国兵と戦って〜瀕死だったの〜。お母さんも殺されかけたところを助けて貰ったのもあって眷属にしたんだ〜」
「しばらくは眷属としていたんだけどね、
ティシニアから告白されたから了承して、
ヴァンパイア達の猛反対を振り切ってここに逃げて来たんだよ」
「へー、なんかすごく大変だったんだね」
「でも父さんはこの話をして5歳の息子が納得してる事に驚きを隠せないよ」
「確かに〜。アトラスちゃんは〜天才だ〜」
苦笑半分の父と適当な母とてもよく似合ってる。その話を聞き俺は父さんに頼み事をした。
「お父さん冒険者として強かったの?」
「一応は最上位のSランクだったよ」
「二つ名もあるんだよ〜確か〜。
迅速決殺のロンド だったかなぁ〜」
「ティシニアやめて下さい。息子の前でそんな恥ずかしい名前で呼ぶのは」
「え〜カッコイイのに〜」
父さんは顔を赤くして俯く、母さんはニヤニヤ顔で追撃している。
だがこれで父さんが強いことはわかった。
心置きなく頼み事ができる。
「お父さん、僕に戦い方を教えて欲しい」
僕の頼みに普段は笑顔しかない表情が変わる。
「アトラス、君は何のための力を欲する。
暴力や略奪をするのも力だ。君には明確な理由があるのかい、力には責任が伴う事もある」
「僕は奪われたくない!全てを守るなんて僕には無理だ。だからせめてこの手の届く範囲の大切なものを失わない力が欲しい!」
僕の回答に母は楽しげに言う。
「いい覚悟だわ〜 正義なき力は暴力。
だけど力なき正義は偽善。
アトラス守るってとても難しいですよ〜
それでも力を欲するの〜?」
「欲しい!力なく奪われるくらいなら、
守るための暴力を僕は否定しない!」
「その歳でその覚悟か、いいよ。父さんが戦い方を教えてあげる。絶対に大切なものを守れるような人になりなさい」
こうして俺の修行は開始された。父さんは槍使いだったので俺も槍を教えてもらった。
こうして50年が過ぎた、私の見た目は18以来変わっていない。槍の腕も父と並び母さんからの太鼓判ももらえた。
母さんには魔術を教わったが生活魔法以外簡単な初期魔法しか使えない。母さん曰く俺のスキルが魔力領域のほとんどを占めているかららしい。
こうして力を手に入れた俺は旅に出る事を両親に告げた。快く賛成してくれた。
「アトラスちゃん、きおつけてね〜たまには帰って来てね〜絶対だよ〜約束だよ〜」
「分かってるよ母さん、知識をつけたら戻るよ」
「アトラス、バンプは嫌われる。正体は必ず隠せよ。あと元気でやれよ」
「ありがとう父さん、帰って来るまでに妹よろしく!」
母さんは赤面して俯き、父さんは焦っている。
「ば、バカな事言ってないでさっさと行け!
ここから一番近い町は西に4日ほど行った場所だ。お前の足なら2日ほどで行くだろう」
「了解、じゃあ行ってくる。二人とも元気でいてくれよ」
「大丈夫よ〜ヴァンパイアはほぼ不死身だし〜ロンドもいるからね〜」
「あぁ、お前こそ元気でやれよ」
軽く言葉を交わし俺は出発する。見送ってくれる二人がとても穏やかで優しい。
ありがとう父さん母さん、俺は軽く感謝を述べて町のある方へ走り出す。
これから始まる新たな日々に心踊らせるのだった。
ありがとうこざいました