8話~婚約!?~
「結婚してください!!」
それは唐突に彼の口から声と共に飛び出した感情だった。
「あの――」
「いや、忘れてください!!嫌ですよね、今日知り合った男にこんな事言われて…」
冒頭からいきなり放り込んだ本人、織田信長自身も自分からでた言葉に動揺している。
「そういう――」
「嫌なら嫌って言ってください。ちょっと口が滑ったというか…あぁ~なんでこんな事言っちゃったんだろうなー」
全くである。セクハラとナンパを足して割ったような発言はいくら若君といっても控えてもらいたい。
「わたし――」
「なーに人んちの娘たぶらかしとんのじゃ」
「げっ…生駒!?」
父親登場。信長ピーンチ!!
「ハッハッハ!!残念ながら吉乃の婚約者はもう決めておる。だいたい尾張の大うつけなぞに大事な娘をやれるか、吉乃も嫌がるじゃろ」
「けっ!!ほっとけ…」
「あの…わたし――」
「若ぁ~終わったみたいですよ~」
キング・オブ・KY、犬千代の横やり…いつの間にか帰って来た
「信長さま、お待たせしやした。おらは蜂須賀村に帰りますが、馬はどうしましょう」
「おぉ…あぁ…その辺に放っとけ、勝手に帰るだろ。帰らなかったら馬屋のオヤジから買い取るから」
うん、セレブだ、ボンボンだ、人間のクズだ。
「おい小倅、そいつはうちの馬屋のじゃあるめーか?」
なにを隠そう、生駒屋敷の大きな財源は馬貸しによるものでその出張所から貸し出した馬なのであった。
「そんな軽々と野に放たれたらたまったもんじゃない。わしから馬屋に戻しておくから置いていきなさい」
なんといい人。生駒の亭主。
「んなら、ここで解散だな。日吉ぃ、楽しかったぜ。」
「いえ、こちらこそありがとうございました。」
「なんかあったら那古野の城に来いよな、きっと若がどうにかしてくれっから!!」
犬千代、完全に人まかせか。
「はい、二人ともお元気で。生駒さんもまた5日後に…」
「うむ、またの」
そしてそれぞれの家路へ着いたのだった。
「吉乃よ、さっきはなんて言いかけてたんだ?」
「ううん、なんでもない!!」
子どもの頃から結婚相手が決まっているとはいかにも難儀なものだ。
しばらく書きためるかもです。