3話〜弟の憂い〜
親父に続いて弟も登場です
あと兄弟争いのキーマンである柴田勝家も…
「よろしいのでしょうか、父上」
「なにがじゃ?」
「兄上の振る舞いですよ。あのままでは家督を譲った後、父上に従っている家中の者がそのまま兄上に従うとは限りません」
「ぉ?そうじゃのぅ。確かにワシが死んだ後、織田家は内乱になるかもしれ―」
「そうならないためにも!!…兄上にしっかりするよう諌めるべきではないのですか」
勘十郎は生まれて初めて声を荒げた。なれない事をしたせいか、顔が赤い。
「…お主ほど織田家を心配する者が信長の弟なら、この家をお主らに譲れるのぅ」
信秀はケラケラと笑いながらそう漏らした。
「―ッ!! 平手殿も、しっかりしてくださいね。それでは失礼します」
勘十郎は信長と同様に早足で帰ってしまった。
「まったく兄弟そろって途中で抜けるとは…まぁよい、平手!!今日は飲むぞー!!」
「はっ!!潰れるまでお供いたしますぞ!!」
勘十郎side
「権六、父上や兄上は一体なにを考えているのか俺には理解できん…」
「信秀様や信長様とはご家族ではないですか…家族なら腹割って話し合うのが一番だと思いますよ」
権六:勘十郎の補佐役。権六は通称で正式な名は柴田勝家。戦での働きは織田家の中でもトップクラスだが、いかんせん頭が回らないせいか、アドバイスには重みを感じられない
「権六よ、我らは家族であると同時に主と従の関係なのだ…腹割って話す機会などないのだ…」
「今は信行様は家来ではなくただの子どもではないですか!!」
権六曰わく、元服を済ましていない者はまだ家来とはいえない。と言うことである。
まぁ少し失礼な気もするが…
「子どもならなおさらこれからの織田家を語る資格などない…」
(果たして兄上は本当に家督を継ぐ気があるのか…?この際俺が――いや、何を考えているのだ…家中が混乱しては元も子もない)
一方信長は…
「〜♪」
勘十郎の心配をよそに上機嫌に友人の家へと向かっていた。
「あっ、お前らはもう帰って良いぞ」
「はっ!!失礼します」
信長は小姓達(付き人)にそう言って友人の家の前に立った。
ちなみに小姓は顔立ちの整った十代の少年が務め、護衛やスケジュール管理、はたまた戦中は夜の相手なども行う。この時点ではまだだが後の織田家重鎮・丹羽長秀や有名なところを挙げると森蘭丸などがこの職に就いた。
「さて、おじゃましまーす」
「ぬぉ?わ、若!?今日は待ちに待った元服の日ッスよ!?まさか忘れて―」
「それならもう終わったさ。少し時間ができたから市にでも行こうと思ってな」
確かに元服はもう済んでいるが、だからといって抜け出しを許される状況ではなかった。
「別に良いですけど、買うものは決まってるんですか?目的もナシにフラフラするのはイヤですよ?」
「目的ならあるさ、フラフラするのが目的だ」
…。
「ま、まぁ丁度俺も市に行こうかと思ってたところでした…」
突っ込まないでいいのか…
弟・信行の幼名が分からなかったので通称の勘十郎を使いました