目指せ!全国制覇!弱小ブラスバンド部
ブラバン第4章
武田「音量を出すには腹式呼吸が大事だからな」
波地成美「まぁそうですけど・・」
武田「じゃ外に向かって発声練習してみろ」
海堂副部長「どうやってやるんですか?」
武田「はぁ〜?そんな事も知らないのか」
「まぁいいや。見てろ」
武田が窓の外に向かい腹に手を当て発声する。
「あ・え・い・う・え・お・あ・おー」
その声はグラウンド一面に響き渡っていた。
野球部員がブラスバンド部の部室を覗く。
野球部1「あんなに声って出るのかよ・・」
野球部全員が驚いた表情を浮かべている。
山田部長「すごい!」
武田「分かったならさっさとやってみろ」
部員達が窓に向かい武田の真似をする。
武田「ちょっと待てよ!それが発声練習とか笑わせんな」
「しっかり腹に力入れて発声するんだよ!」
棚町薫「分かりました・・」
「発声練習の基本は腹式呼吸だ。脚を肩幅に開いて腹から声を出すんだ」
部員達が頷き発声練習を行う。
しかしグラウンドには響かず野球部の練習場所に微かに届く程度だ。
武田「ダメだな」
部室に沈黙が流れる。
武田「お前ら明日から腹筋30回3セットだ。そこから始める」
海堂副部長「えっ?」
波地成美「それは流石に・・」
部員達はみんな固まっている。
武田「いやなら予選も全国大会も諦めろ」
「・・・」
再び部室に沈黙が流れる。
武田「お前らの夢は所詮そんなものか。
ガックリしたな」
部員達「・・・」
武田「職員室で待ってるから、山田!腹が決まったら来い。分かったな」
山田部長「・・はい」
「ガラガラ、ピシャン!」
武田が部室を後にする。
海堂副部長「どうする?」
山田部長「やるしかないよ」
棚町薫「でも先輩。腹筋なんてやった事ないです」
波地成美「私も・・」
海堂副部長「予選突破が第一目標なんだから先生の言う事を信じてやるしかないでしょ」
波地と棚町が顔を見つめ合う。
波地成美「分かりました・・」
ー10分後ー
「ガラガラ」
山田部長「失礼します・・武田先生」
武田「おう早かったな。で、どうする?」
山田部長「やります。やらせて下さい」
武田「みっちり鍛えてやるからな」
山田部長「・・・」
武田が職員室を出ていく。
ー部室ー
武田「お前ら、腹は決まったのか?」
山田以外の3人が顔を見合わせ武田に頷き掛ける。
武田「よし。やってみろ」
部員達がおずおずと床に仰向けになる。
武田「じゃあ始めるぞ」
「1〜2〜3〜」
苦しそうな表情を浮かべながら腹筋を行う部員達。
波地「もうダメ」
武田「あぁ〜。まだ6回だぞ。所詮そんなもんだ。お前らは」
息を切らす部員達に容赦なく噛み付く武田。
武田「何が県予選突破だ。腹筋も出来ない。たった6回しか出来ない奴らの為に此処まで来たのか・・情けなくなるな」
「後は好きにしろ」
部室を出ていく武田を山田が止める。
山田部長「先生!待って下さい」
武田「・・・」
山田部長「お願いします!何でもしますから見捨てないで下さい!」
武田が振り向くと必死な形相の山田が居る。
武田「なんだ。根性無しがまだ俺に何か様か」
山田が咄嗟に土下座する。
武田「何の真似だ?」
山田部長「少しでもこの部に望みが有るなら力を貸して下さい!お願いします!」
山田の土下座は5分程、続いた。
武田「ったく!しょうがねぇな!」
部室に戻る武田と涙目の山田。
それを見た武田は全国大会に向けた山田の思いが手に取るように分かった。
武田「いいか。もう一度、言っとく。全国大会を目指すにはそれなりの覚悟が大事だ。甘い考えで居るがそれが真実だ」
武田が疲れ果てた部員を見渡す。
武田「今日はもういい。発声練習だけしてろ」
再び窓の外に向かい発声練習を行う部員達。
諦め顔の武田に微かな希望が湧いた瞬間だった。
武田「今日はこれで終わりだ」
山田部長「えっ?まだ15時じゃ?」
武田「これ以上、続けて何になる?基本は腹式呼吸だって言ったよな?家に帰って一人一人もう一度、考えろ」
「明日、全国大会とは何かを全員に聞くぞ」
部員達「・・・」
武田「じゃあな。気をつけて帰れ」
部室を後にする武田に少しの優しさを感じた部員達だった。
ー続くー




