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枕の下に 希望の上に(6)

あまり

年の瀬

交通事故を片目に

各家庭が

忙しなく動き

一年の初まりを

準備する

埃まみれの裏側

日頃の雑さが

一気に押し寄せる




面倒な生活なんて

本来なら

有りはしないのに

常日頃から

特別な日なんだろう

今日は

もういいや

誰かが言って

誰かが納得した

隙間風みたいに




僕等の常日頃は

いつだって最小値だ

割り切って

更に割って

もう

それ以上小さくしたら

あまりが出てしまう

だから

泣いてしまうのだ

あの日のあまりを

消していく

冷たい雑巾




蒸しあげた餅米

そのまま食べれば

腹持ちが良くて

半日くらいは保つだろうか

コンセントを差して

モーター音が鳴る

田舎の餅つきも

機械化されている

臼と杵を使った

あの餅つきは

いつの間にかショーになった

これは僕等の

文化に対する怠慢か

それとも

ただのあまりか




手で丸める

餅の温かさは

昔と違っていて

きっと

激烈に熱いのだ

何か

もういいや

手放した物は

二度と戻って来ない

それを考えて

僕等は

手放したのか

ランドセルみたいに




僕等の常日頃は

いつだって最小値だ

引いて生きる

マイナスになる前まで

もうそれ以上引いたら

死んでしまうから

今度は割っていくのだ

あまりがあれば

ゼロにはならない

だから

泣いてしまうのだ

あの日の差し引きを

消していく

冷たい雑巾




冷たいけれど

綺麗な部屋の空気

外と内が握手する

子供達の声

元気だな

後は

餅を飾って

蕎麦の準備

顔を見ながら

一緒に食べる相手は

あまる人




ゼロに出来なかった

この形は

あまってしまったのではなく

あまるべきだったのだ

何方で見るのか

きっと

泣かなくてもいい

選択肢がある

数学みたいに




僕等の常日頃は

いつだって最小値だ

割り切って

差し引いて

もう

それ以上小さくしたら

あまりが出てしまう

だから

大切にしてしまうのだ

「あの形」の数を

増やす為に

リセットしていく

温かい器と除夜の鐘



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