異聞「自衛隊」史 3
日本には5つの陸上組織が存在している。うち4つは武装している訳だが、それらが同じ武器で統一されているかというと、当然ながらそんなことはない。
とは言っても、自衛隊が発足し、海上保安庁が最初の警備隊を創設した時には、すべての部隊がM1ガーランド小銃やM3短機関銃といった、同じ武装を有していた。
「海援隊」と「空挺自衛隊」も、ともにM4中戦車やM24軽戦車であった。
しかし、NATO準拠の弾薬への移行に当たって、早くも違いが表れてくる。航空自衛隊では米空軍からの強い勧めもあって基地警備隊へのM16小銃の配備が決定し、NATO弾から逸脱した5.56ミリ弾へと移行する事となった。こちらが後に主要なNATO弾となるのだが、当時としては全く異質な選択と言って良かっただろう。
それとは別に、海上自衛隊では当時のNATO弾である7.62ミリ弾を用いる小銃が検討され、FN製FALやH&K製G3などが検討され、最終的にFALがライセンス生産されることとなった。海上保安庁でもこのFALを採用し、警備隊へと配備が行われている。それと共に、機関銃もFN製MAG機関銃が採用され配備されることとなった。
しかし、こうした動きの中で、「空挺自衛隊」は機関銃の取得で困難を極め、MAGをベースとした5.56mm仕様の国産機関銃開発を打診、こうして完成したのが66式機関銃である。
その後、警察が組織した警備隊では7.62ミリ弾は狙撃銃としてならともかく、小銃としては威力過剰として、航空自衛隊が採用するM16や66式機関銃を採用している。
装甲車両に関しては、当初こそ「海援隊」も「空挺自衛隊」も同じであったが、「海援隊」は船舶輸送を重視して軽量なM41を好み、その後継となる76式シリーズの開発を行っていく。たいして「空挺自衛隊」ではM4の後継戦車としてM48を導入、M24の後継にはM551を選定した。その後、M551と弾薬を共通化する目的からM60A2の導入も行われるが、ガンランチャーの性能への不満から、76式水陸両用戦闘車開発の為に国産開発されていた90ミリ砲を搭載した新たな軽戦車開発が行われ、78式機動戦闘車の採用に至る。
しかし、北海道での主力は米国から輸入したM48であり、その性能ではソ連戦車への対抗が難しくなると、米陸軍が採用するM1戦車と、ドイツで開発された120ミリ砲を組み合わせたM1Jの開発が模索されるものの、米国が120ミリ砲を採用したM1A1の開発も行っていたことから、その輸入が決定されることとなった。
「海援隊」でも一時はM1の採用ないしは、120ミリ砲を備えた国産戦闘車両の開発が模索されたが、国産戦車開発への強い不信感から、主力戦車の国産開発は海空自衛隊とも口にすることなく今日に至っている。その為、「海援隊」ではM4の廃止後はもっぱら76式が戦車としての役割を担い続け、現在も主力戦車としては全く見劣りする105ミリ砲しか有していない。
それに対して「空挺自衛隊」では、主力戦闘車であるM1A1と同じ120ミリ砲を低反動化した上で、78式の後継となる機動戦闘車の主砲に据え、海空間での弾薬共通化を敢えて無視する形となっている。
それだけでなく、国際的に5.56ミリ弾が西側の主流となっても「海援隊」は7.62ミリ弾を運用しつづけ、現在も「空挺自衛隊」が導入したM4カービン同様のレールシステムを導入したFALの改良型である96式小銃を運用している。
ただ、つい最近、米陸軍が新たな高威力弾薬を使用するXM5小銃の採用を決定した事から、「空挺自衛隊」がその弾薬へ移行する際には、「海援隊」もこれまで主張してきた長射程高威力を発揮する新弾薬へと移行し、長年幻に終わっていた弾薬の共通化が実現するのではないかという見方も生まれている。
さて、「海援隊」と共にFALを採用した海上保安庁であるが、小規模の警備隊である事、近距離戦闘が主に想定されている事などから、5.56ミリ弾への移行を行っているが、「空挺自衛隊」や警察が採用したM16ではなく、FN社製小銃FNCを採用している。ただし、標準的なFNCではなく、銃身を幾分短縮した独自モデルとなっており、FNC・コーストガードという独自名称を持つ。
こうして4組織のうち3組織が全く違う小銃を採用する状態であり、まったくもって統合へ向けた動きというのが見られない状況である。
さらに特異な事例として、「空挺自衛隊」は榴弾砲を保有していない。そもそもが基地警備隊であり、遠距離攻撃という戦術を有しておらず、遠距離攻撃はもっぱら航空支援に委ねられることとされている。これはまさしく陸軍ではありえない発想といえるだろう。
そして、「海援隊」も特異な戦術を有している。
「海援隊」は本来、海上にある本隊を陸上から掩護し、母港の機能を敵から守る事を本分としている。
その為、こちらも遠距離攻撃という概念を有してはいなかった。が、54口径5インチ砲を備える75式自走沿岸砲が開発されたことで、射程23kmの遠距離砲撃能力を得、陸上へも指向されることとなった。しかし、本砲の主たる目的は、敵上陸部隊に対する攻撃であって、陸上での遠距離射撃は副次的な目的とされている。これはファミリー一族として開発された14式自走沿岸砲でも基本的には同じとされている。14式では一般的な45~52口径を有する西側155ミリ榴弾砲とは異質な60口径という長砲身を有し、一昔前の対艦ミサイルに匹敵する70kmにも及ぶ射程を実現している。最大射程は誘導砲弾で100kmに届くともされる。が、あくまで対艦ミサイルの補完が主要な目的であることが強調されている。
これはとりもなおさず、日本における陸軍嫌悪が原因である。今なお、榴弾砲や加濃砲といった陸戦砲への否定的な意見がまかり通るため、陸戦用を主要な目的とした「大砲」は忌諱される傾向にあり、目視距離での直射や迫撃砲の様な簡易な曲射火砲でなければ保有できないと言った旧態依然とした因習めいた解釈がまかり通っている。
この為、政策的な面での陸上部隊の統合や新編が叶ったとしても、このような「陸軍の再来」を阻む細々とした迷信めいた制約や不文律が打破されない限り、本来の意味での「陸軍の再建」は達成不可能であると目されている。
果たして日本が世界の常識を受け入れる日は来るのであろうか。
今回は即興で書きなぐった話なので、かなり詰めが甘く、?な齟齬をきたしている部分は、まあ大目に見てください。
しかし、戦車を特車などと呼ぶような状況に至る国だから、よりいっそう陸軍悪玉論が吹き荒れるとなると、戦車開発など日本では不可能な事は間違いない。
そして浮かんできた「大砲」への忌避感というモノ。
それを放り込むとよりいっそう、「陸軍の再建なんか無理ポ」という話の流れに・・・




