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とある世界の日本  作者: 高鉢 健太 
異聞「自衛隊」史
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異聞「自衛隊」史 2

 つい10年前まで中国には5つの海上執行組織が存在し、五龍などと呼ばれていた。


 しかし現在では海警局に整理集約されている事はよく知られる事実だ。


 そして、日本にも5つの陸上組織が存在し、今なお存続している。


 当然そのうちの2つは「海援隊」と「空挺自衛隊」だが、それら2つが自衛隊として組織された後も、様々な理由から陸上組織が創設されていくことになった。

 それはとりもなおさず、日本に「陸軍」が存在しない事に由来している。


 まず創設されたのは、海上保安庁追跡警備隊であった。


 日本における陸軍嫌悪は、なにも「軍」に限ったものではない。戦前戦中には特高警察という思想統制を象徴する警察組織が存在し、憲兵と並んで恐怖の対象と戦後は流布されている。

 その為、海上における密漁や密輸、密入国などの海上犯罪が起きた場合、その容疑者が陸上へ逃げた場合、誰が追跡するのかという事が話題となった。


 普通に考えれば、海上保安庁と警察が連携して対応すれば良いとして話で決着してしまうのだが、しかし、日本人の感情はそれを許さなかった。


「陸における司法権限をすべて警察にゆだねてしまうのは、特高警察のような強権的な組織が再来しかねない」という、海上保安庁から流された噂話が拡大し、海上保安庁が海上犯罪に関するほぼすべての管轄権限を掌握する事が決定された。


 今にして思えば、それは感情論に訴えた権益拡大でしかないのだが、陸軍悪玉論が声高に叫ばれ、「海援隊」や「空挺自衛隊」への風当たりも強い中では、その様に流されてしまうのも仕方がなかった事だろう。


 そして、当然のように組織は拡大していく。


 当時、自衛隊は北方重視政策をとっており、「海援隊」や「空挺自衛隊」の主力も北海道に配置されていた。

 その為、特に西日本はがら空きと言って差し支えない状況であり、海上保安庁にとっては組織拡大のチャンスであった。


 そして、五島列島や対馬をターゲットとした警備隊の創設が行われ、対馬には120人で組織された対馬警備隊が配置されることとなった。


 これに対して「海上保安庁は軍隊として行動しない」という海保法25条に抵触するのではないかという疑義が出てきたのだが、国境警備隊は軍隊には当たらないという政府見解が示され、諸外国の国境警備隊に倣うように、機関銃や自動小銃を備え、バズーカや迫撃砲までを装備してゲリラ・コマンド対策も行う部隊となっている。

 その後、沖縄返還に伴い、南西諸島を管轄する第11管区が創設されると、国境警備隊を自負する海上保安庁は警備隊の沖縄配備も行っている。

 ただ、沖縄本島には航空自衛隊が「空挺自衛隊」である第5広域警備旅団を配備したため、押し出される形で第11管区警備隊は宮古島や石垣島、与那国島へと分散配置されることとなった。それでも総勢1800人を数える、海上保安庁有数の警備隊であり、対馬警備隊への小型装甲車配備と同時に、軽装甲機動車や対戦車ミサイルの配備が行われ、与那国島には広域国境監視センサーとしてレーダー設備も設置されることとなった。

 海上保安庁は同様の広域国境監視センサーを対馬、五島列島、知床、稚内にも展開している。センサー設置と共に100~800人規模の部隊を各地に配置しており、追跡警備隊は総勢8000人を数える。


 さて、その様な海上保安庁の陸上での勢力拡大を警察が黙って見ていたかというと、もちろんそんなことはない。


 自衛隊が北方重視で本州や九州ががら空きであることは、警察にとっても権益拡大のチャンスであっただろう。もちろん、その様な本音を公言する事などしなかったが。


 警察は安保闘争に代表される大学における左翼運動やあさま山荘事件などの過激派活動への対応として、武装ゲリラ化した場合の対応を提言、一般の機動隊を越える重武装の戦闘部隊の創設構想を立案していた。


 しかし、それらは内部で検討している段階で新聞がスクープし、国会でも大問題となった。


 この時計画されていたのは、対戦車砲や装甲車を備えた事実上の陸軍部隊であり、とてもではないが、日本人が許容できる限度を超えていた。


 その為、警察庁幹部が数十人に上る罷免、免職となり、関与した警視庁幹部も退任や辞職、さらには国会議員にも辞任を余儀なくされる者が出る大事件へと発展した。


 こうした事から、武装規模を縮小し、あくまでゲリラ対策のための自動小銃と機関銃を備えた警備部隊として再検討の上、東京、大阪、仙台、新潟へとそれぞれ2000人規模の部隊を配備することで決定した。

 しかし、冷戦の緊張が高まる中で、さらに福岡、広島、金沢、札幌への配備も行われ、さらには沖縄返還後には沖縄も追加され、2万人近い総員を数える立派な「陸軍」へと成長する事となった。


 そして、武器こそ有しないが、消防も指をくわえて見ていた訳ではない。


 陸軍に相当する組織がないという事で、伊勢湾台風をはじめとした災害では全く災害対策や救助、救援が間に合っていなかった。

 その為、広域的な救助隊、災害対策部隊の必要性が唱えられ、伊勢湾台風の後に全国を10の管区に分けて、それぞれ2000~5000人規模の救助、啓開専門部隊を配置しており、総勢2万3千人に上る。


 本来、陸軍が存在すればこのような雑多な様相は呈さないはずだが、今の日本ではそのような声はほとんど聞こえてこない。


 現在の日本には、「海援隊」4万2千人、「空挺自衛隊」6万8千人に加え、5万1千人に上る陸上組織が存在している。総数を合わせれば立派な「陸軍」となる事は間違いないのだが、その様な話が出るたびに、「それぞれの組織がそれぞれの縄張りや権益をめぐって牽制し合う事で『陸軍復活の悪夢』を防いでいる」と言った論がどこからともなく吹聴され、統合や合同組織化の話が幾度となく阻まれている。もちろん、近い将来にわたって、各組織独自の増減はあり得るだろうが、統合や合同指揮組織の発足というのはまだまだ考え辛い情勢であることは間違いない。

考え方によっては、今の何でも自衛隊という偏った信頼がない分、無暗な無理難題や任務の積み重ねがなく、適材適所でうまく回せる可能性も微レ存?


まあ、あまりに分散しすぎて不効率極まりないのはどうやっても覆せないのだけども。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんとなく、本作の世界線だと自衛隊じゃなくて国防軍が出来そうな気がするんですが、どうなんでしょうね。 自衛隊ってぶっちゃけ現実世界の今もそうですが警察予備隊とかいう武装公務員であって軍隊じゃ…
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