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とある世界の日本  作者: 高鉢 健太 
異聞「烈婦」秘話
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異聞「烈風」秘話

 日本を代表する戦闘機として名前を上げるとすれば、誰しもまずは烈風と口にするのではないだろうか。


 マリアナ沖での活躍を皮切りに、敗色を増す戦場において米軍を恐怖させたその姿はまさに、日本を代表する戦闘機にふさわしい。


 しかし、戦時中、日本海軍における烈風の評価はあまり高くない。


 当時、開発に難航して何とか完成させた雷電にしても、当時日本ではあまり評価されていなかったのだが、それはゼロ戦の様な軽量で軽快な機体では無かったからだという。


 烈風はそのエンジンの大出力を受け止めるために強固な機体を持っており、雷電よりさらに重量があり、ゼロ戦と比較して1.5トンほども重くなっていた。エンジン出力が倍近いのだから当然と言えば当然だが、やはりその差はパイロットたちに良い印象を与えていない。


 しかし、戦後、米国での評価が伝わると一転、日本でもその人気と評価が大きく向上していく事になった。


 とはいえ、当時の海軍はあまり烈風に期待もせず、より小径な中島製エンジンである誉を搭載した紫電や紫電改、或いは、烈風に次いで開発を行った陣風や征風に期待をかけていたという。


 特に大きな期待をかけたのはゼロ戦の後継機として並々ならる意気込みで要求仕様をまとめ上げた十八試艦戦「征風」だっただろう。


 しかしこの機体、実は当時の艦上攻撃機「流星」と同等の大きさを持つ大柄な機体で、完成しても烈風の方が高性能だったのではないかとさえ言われている。


 しかし、それでも海軍は烈風より期待をしていた。


 それは何より烈風の生い立ちがそうさせたと言って良い。


 烈風は期待されて完成した艦上戦闘機と言う訳ではなく、ゼロ戦が制式化し実戦配備を始める頃に、次期戦闘機の在り方を問うために試作された、いわば本来は研究目的の機体でしかなかったからだ。


 しかし、完成してみると存外悪い機体ではなく、限界を迎えていたゼロ戦と開発開始が遅れた次期艦戦の間を埋める適当なストップギャップとして採用されることになった。

 もちろん、研究目的であったので、海軍の本来の要求仕様には合わないし、発展性が高いとも言えなかった。

 とは言っても、ふたを開けてみると思わぬ活躍をすることになり、戦争後半の日本を支える機体として十分に役立つことになったのだが、如何せん、海軍軍人にとっては、要求に合致しないその機体の評価は低いままとなってしまった不幸な機体と言えるのかもしれない。


 さて、そんな烈風を語るには、まずはエンジンの話しから始めないといけない。


 

 烈風に搭載されたエンジンはよく知られる通り、辰星(しんせい)だが、その開発を語るには三菱の星形エンジンの傑作と言われる金星の話しから始めないといけない。


 金星エンジンは三菱が長年開発に取り組んできた星形複列14気筒エンジンの完成形として、九六式陸上攻撃機や九七式飛行艇に採用され、以後も陸海軍の多くの機種で搭載されている。

 中には液冷エンジンの生産が間に合わずに三式戦闘機「飛燕」や艦上爆撃機「彗星」に搭載されたという事例もある。


 しかし、その金星エンジンも急速に発展する当時の情勢の中でどんどん性能的に見劣りするようになり、単発機から四発機までというその万能性は早々に失われ、より大出力のエンジンが求められることとなった。


 そうして開発されたのが、金星の排気量を引き上げた火星エンジンである。


 しかし、金星を開発した開発陣にとっては単なるスケールアップでしかない火星には不満があった。


 火星と同等の排気量ならば、金星を18気筒化しても達成可能であり、より技術難易度の高い18気筒化に挑戦したいという意見が多く出ることになった。そうした意見を背景に、火星が完成して早々、金星の18気筒化が社内でスタートしていた。


 当時の火星の出力は1600馬力に届かなかったが、金星18気筒化ならばすぐに1900馬力は可能という試算が行われ、金星に対して100ミリも直径が大きな火星に対し、僅か20ミリ程度の大型化で同等の出力を得ることが可能と言う話に、海軍も注目する事になった。


 しかし、如何せん初めての18気筒エンジンと言う事で、すでに完成した火星を差し置いてまで開発を急ぐというところまでは話が進まなかった。


 その為、当時開発がはじめられた局地戦闘機に関しては、大型機用大径エンジンと言う不利に甘んじた上で火星を搭載しての開発が開始されていた。


 それを横目に開発が行われた18気筒エンジンは小型化のための金星から仕様変更を受け、瑞星並みの高回転という意欲的な開発が祟って実用化が遅れることとなった。


 それでも、まずは金星と同じ2500回転として1700馬力という形でまずは完成させることを優先し、1941年10月には何とか海軍に制式化され、辰星と命名されることになった。


 この辰星というのも、火星より小さいながらも同等の出力を持つ事から命名されたと言われている。


 このエンジン開発を見て中島飛行機が栄を18気筒化した誉の開発に躍起になったのは有名な話だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 史実のA18よりA20の開発が先行された世界ということですね。先が楽しみです。 瑞星とストロークが違うので平均ピストンスピードがちょっと心配……
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