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とある世界の日本  作者: 高鉢 健太 
自動砲のおはなし
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える・しぃ・えす! 4

 そうした中で掃討艦にも変化が訪れることになる。


 当初は掃討艦の役割自体が疑問視され、役割自体を変更して小型駆逐艦として多機能性を高める話が盛んになるが、1993年に始まった第二次三韓戦争の影響で黄海、東シナ海北部、日本海西部では大韓国や高麗国による襲撃行為が横行し、1998年に発生した対馬襲撃事件によって大きく議論の方向性が修正されていく事になる。


 この事件を受けて再度、掃討艦の必要性が問い直され、原点に回帰する事になったのは何の因果であろうか。


 最終的に決定された要求仕様は米国が検討していた掃討艦と酷似する内容となっている。


 ただ、この要求仕様では75式57ミリ速射砲では重すぎる。かと言って、近接防御システムに役割を担わせるのは心もとないという判断に困るものとなってしまったが、57ミリ速射砲自体の軽量化、更なる発射速度向上の研究が続けられており、21世紀を迎えると同時にその試作型が日の目を見ることになった。


 それはこれまでの機構を徹底的に見直し発射速度を向上させ、軽量材を多用することで軽量化も達成する事が出来ていた。

 さらに、トレンドになろうとしていたステルス性にも配慮した低姿勢な扁平砲塔の採用も行われている。


 こうして2003年に採用されたのが、03式57ミリ軽量速射砲であり、重量を5.8tまで軽量化し、発射速度は毎分400発まで引き上げることに成功している。更にデジタル信管を用いた対空、対水上弾の採用によって近接防御システムとしても機能させる事が出来る様になり、掃討艦では対水上、近接防御火器として03式57ミリ軽量速射砲が前後に各1基搭載されることになった。

 

 米国が計画した掃討艦ではフリゲートとしての基本的な能力を維持し、対潜戦をヘリに依存する関係からヘリ格納庫を有した上で、敵性小型船舶への対処を行うために57ミリ速射砲を装備し、近接防御システムにも対水上戦能力が付与される形となっている。そして、ウォータージェットを採用することで40ノットという高速を発揮できる非常に豪華でコストのかかる仕様となっている。


 対して日本では原点回帰によって敵性小型船舶の制圧を重視して多機能艦に求められる能力の一部を割り切ることでコスト削減を行っている。

 その為、ヘリ格納庫を設けることはせず、対潜戦は短魚雷と艦首部に設けた16セル型VLSへ対空ミサイルを減らして搭載される対潜ミサイルに依存する。対艦戦は127ミリ速射砲に依存し、VLS発射型の対艦ミサイルの完成を待っているのは米国と同じである。


 更にウォータージェットを装備しない事によって速力が35ノットに制約されているが、それらは全く欠点とはなっていない。


 というのも、日本における掃討艦は哨戒機や大型艦艇と連携して活動を行うことが基本だからだ。


 米国が遠隔地での作戦を基本として単艦能力を引き上げる必要がある事に比べ、自国沿岸域での活動を主体とする事から低コストを決断出来たという事情も作用したと言えるだろう。


 そんな掃討艦ではあるが、千島列島周辺における長期哨戒能力を有する事から、2006年に竣工した西表型掃討艦は2008年にはさっそくアデン湾での海賊対処任務へと派遣されている。


 その派遣に際しても、ヘリ搭載駆逐艦や哨戒機の派遣を行い、相互の連携で活動を行う体制を採っている。

 後に派遣体制が縮小され、掃討艦と哨戒機3機となってからは、国際任務部隊内の連携を強化することでその穴を埋める体制がとられているという。


 対して同じ対馬襲撃事件を受けて新たに計画された巡視船では、03式57ミリ軽量速射砲2基を備え、ウォータージェット推進による42ノットを誇る高速巡視船を計画する事になった。


 というのも、対馬海上保安署を狙った大韓国軍が使用していたのが40ノット近い高速ボートだったからだ。

 襲撃当時、対馬に配備された巡視船や巡視艇では逃走する高速ボートを追跡できずに被害だけを受けて取り逃がす結果となった反省から、自衛隊とは違う方向性を打ち出すことになった。


 この様に海上保安庁がコスト度外視の姿勢を示すのには訳がある。


 そして、そもそもの襲撃事件の背景には長年の日本と大韓国との関係があった。


 済州島に大韓国が建国されて以後、1950年代の一時期を除いて、東シナ海での漁業問題による衝突が繰り返され、大韓国の半島遷都作戦以後には深刻な対立関係が続いている。

 

 対馬は朝鮮半島に近い事もあって、海自基地こそ存在しないが、海上保安署は二ヶ所存在する要衝となっている。


 その為、対岸である高麗国の港釜山と対峙する関係から、日頃より衝突が絶えなかった。


 第二次三韓戦争において大韓国が釜山侵攻を行い、対馬沖も戦場となると緊張は最高潮に達した。


 戦争勃発から2年後に起きた五島列島沖襲撃事件で巡視船が攻撃を受け沈没し、23名が犠牲になって以後、海上保安庁は襲撃船の取り締まりではなく撃沈を目的とした戦闘行動へと移行しており、釜山侵攻作戦を行う大韓国軍による越境行為に対する攻撃さえ頻繁に行われている状態だった。


 そして、1998年春に釜山の占領に成功した大韓国が報復として行ったのが、対馬襲撃だった。


 大韓国側も日本との戦争は望んでおらず、表向きは海賊による襲撃と発表し、日本側も公式にはその建前を受け入れている。


 当然ながら、表向きの話とは別に、海上保安庁は対馬海峡や東シナ海における大韓国の不法行為に断固処置をとる構えであった。


 そうして出来上がったのが、コストを度外視した高速巡視船である、ふくえじま型である。


 ふくえじま型巡視船では巡航用ディーゼルと高速用ガスタービンという完全に軍艦と同じ仕様の機関が搭載され、57ミリ軽量速射砲2基、25ミリ機関砲2基という武装となっている。

 すでに他の巡視船では精密射撃や証拠撮影用に赤外線カメラを主とした光学射撃管制装置を主軸とするようになっていたが、ふくえじま型だけは西表型掃討艦と同じフェイズド・アレイ・レーダーを備えた戦闘システムを搭載している。

 ふくえじま型の多くが九州に配備されているのも、大韓国を睨んでの措置であり、ミサイルの装備こそないものの、戦闘を目的としているのは明白である。


 そして、2021年現在、1980年代に建造されたヘリ搭載型巡視船の後継として、ふくえじま型と同じ戦闘システムを備えた後継船の配備が始まっている。


 ふそう型巡視船は57ミリ軽量速射砲3基というふくえじま型以上に強力な武装とヘリ運用能力を備えた巡視船で、満載排水量4700トンに達するため、速力こそ常識的な30ノット程度まで低下しているが、充実した装備内容の為、西表型掃討艦以上に掃討艦らしいという声もあるほどだ。


 その為、ふそう型巡視船を基礎として、主機をガスタービンとして速力を35ノットへと引き上げ、艦首砲を127ミリ砲へ変更し、VLSを備えた掃討艦計画が進行している。


 ふくえじま型についてはあまりにも高コスト過ぎる事から6隻で中止され、コスト低減の為ために機関を変更し速力35ノット程度に抑えた、いんのしま型へと移行されることになった。


 海上保安庁がここまで戦闘的な配備計画を進めているのは対馬襲撃事件だけではなく、三韓戦争終結後にはロシアの復調で高麗国も一時の低迷を脱し、元の軍事国家へと復活しつつある中で引き起こした日本海フェリー襲撃事件や朝鮮半島を巡る中ロの対立から大韓国に対する中国の支援が行われていることも影響している。

 第二次三韓戦争においては天津港が封鎖される憂き目にあったにも拘らず、敵の敵は味方という事であるらしい。


 そんな中国との間にも昨今、尖閣諸島問題が浮上し、海上自衛隊ではその対処も踏まえ、ふそう型巡視船をベースとする次期掃討艦計画が進行しているのである。


 やはり、アデン湾派遣によって個艦能力の充実は必須という教訓が得られた結果であると思われるが、ここまで大型化すると世界的にはフリゲートと認識するようになるのだが、掃討艦という呼称を変える気はないらしい。



 そして、米海軍においてもフリーダム級掃討艦では小型に過ぎるという不満の声があるとの事で、どうやら、ふそう型巡視船をベースとする日本の次期掃討艦計画に興味を示しているらしい。


 

 


ふそう型巡視船や次期掃討艦のイメージは、もがみ型護衛艦よりもアドミラル・ゴルシコフ級フリゲートの外観が近いやろうな。


 だって、ヘリ格納庫上に2基の57ミリ砲積むんだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] こうしてみると史実海自の警備艦/護衛艦に統一名称は偉大だ 1万トンオーバーでもDD表記 掃討艦は何になるのだろうか? CP(combat patrol)?DE、PFでは無いな 史実並みに…
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