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とある世界の日本  作者: 高鉢 健太 
自動砲のおはなし
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える・しぃ・えす! 3

 この様に掃討艦という艦種は上海事変における大惨事を発端に生まれたモノである。


 米国における掃討艦開発経緯と非常に酷似したものを持っているのはお判りだろう。


 そして、その兵装もまた、掃討艦の変遷を参考にしているのではないかと思われる。


 掃討艦はまずは間に合わせの武装を載せて、間に合わせ的に建造されたと言っても良い。


 たまたま開発されていた水雷艇の船体をベースに、大重量の魚雷を兵装から外し、目的に必要な小口径火砲を増設した。

 さらに、魚雷艇に対処できる速力を得るために機関を強化した。


 米国でも同じことを考えていた様だが、船体自体は見つからず、新たに開発するしかなかった様だ。


 しかし、搭載する兵装に関しては、明らかに掃討艦を参考にしたと思われる。


 掃討艦では沿岸域で活動するため、対地火力支援も副次的に担当する事が求められることから、米国においても、駆逐艦に装備される127ミリ速射砲Mk45を主砲とすることでその要求を満たそうとしている。


 70年前とは違って今やミサイル装備は必須であるが、その部分も既存の対空ミサイルを最小限のVLS8セルを備えることで達成している。


 そして、本来の目的である敵性小型船舶への対処には57ミリ速射砲Mk110と20ミリ近接防御システムMk15を備えて対処する。


 ここにも掃討艦らしさを感じるのは私だけだろうか。


 奄美型は間に合わせという事もあって6斤速射砲で対応しているが、掃討艦として最初から設計された沙弥型には九六式57ミリ速射砲と九六式25ミリ機銃が装備されていた。


 沙弥型においては57ミリ速射砲は本来は対水上火力ではあったが、8センチ高角砲の後継としての機能も有しており、当然ながら対空射撃も可能である。

 当時、57ミリという大口径機関砲は他になく、この口径でもって毎分50~60発を誇った。

 25ミリ機銃は対空火器として備えられたものではあるが、水平射撃を行えば魚雷艇や武装ボートへの対処を可能にする。


 さらに、江田型においては対地、対水上、対空に十分な攻撃力を持つ九八式12.7センチ単装高角砲と57ミリ連装速射砲が装備されているのだから。


 米国においても、開発中のVLS発射型対艦ミサイルの搭載を予定しており、まずは在り合わせでベースを作り、徐々に充実、発展させていくという手法にも共通した思想を見る事が出来る。


 艦の形状は沿岸域での行動を意図した関係からステルス性を重視した傾斜平面で構成されているのは当然と言える。

 が、経費削減や量産性を重視して平面を多用し、射界を得るために台形の上部構造物や煙突が沙弥型や江田型でも採用されていた。


 この類似性に疑問を抱かないのは、今現在我が国を含め、世界の多くの国で建造される艦艇がステルス形状、ないしはステルス性を意図した形状を採用しているからだと言える。


 翻って沙弥型や江田型を子細に見ると、本来ならば疑問点があまりに多い事に気が付くのではないだろうか。


 そもそもの奄美型は船体も武装も間に合わせであったので、そうした違和感を持つことは無い。


 沙弥型は国後型から北方警備特有の装備を省いた形状の艦で問題なかったのではないか。


 それは設計を簡素化して鋼材使用量を減らす目的で艦橋を小型化した松型を見ても分かる。


 当時の一般的な考えではあのような艦こそ普通であったはずだ。


 しかし、沙弥型や江田型には90年代以降のステルス性を意識した形状が採用されているとしか思えない形をしている。


 もちろん、57ミリ速射砲の射界を得た上で艦内容積を確保するには合理的という一般的な主張に疑義は無いのだが、だからと言ってそれを認めるにはあまりに未来的すぎる。


 現在でも沙弥型や江田型に関する資料は多く残されており、九六式57ミリ速射砲と共に戦後もしばらく自衛隊や海上保安庁で使われ、その存在や機構を疑う余地など全くない。だからこそ、不思議であり、不自然ではないかと考えてしまう。


 その思いを強くする最大の要因は、小野田兄弟の地元にある資料館の模型だろう。


 江田型掃討艦には更なる発展型が構想されていたことが伺える。


 発展型では国後型のように艦の前後に伸びる上部構造物を備え、居住性の大幅な改善と、その上部を利用した電子装置の搭載を意図していたことが伺えるのだが、模型を見れば、その形状は明らかにイージス艦を彷彿とさせる台形を基本とした傾斜面で構成されている。


 藤本喜久雄という人物も調べれば調べるほど謎に満ちている事は誰もが知っている事だが、彼が開発に関与した九六式55口径57ミリ速射砲は戦後も自衛隊で長らく運用され、性能を向上させた75式70口径57ミリ速射砲や、諏訪乃瀬型掃討艦に積まれる03式70口径57ミリ軽量速射砲へと受け継がれ、その機構は基本的に継承されている。


 火砲を専門とする技術者では無い彼が、何故このような優秀な火砲の自動装填機構を開発できたのかは今でも謎である。

 

 そして、彼の愛弟子と言われる小野田真介について見て行けば、彼がレーダーに関連する技術を収集し、実現に向けて動いていたことが分かっている。


 そんな彼が設計したのが、沙弥型や江田型である。戦後、建機メーカーを立ち上げ、一代で世界に名だたる企業に育て上げた事を見ても、その優秀さや先見性は分かる。

 惜しむらくは戦後、彼が艦艇設計に関わる事が無かったために、発展型掃討艦が実際に建造されることが無かった事だろう。


 さて、日本における戦後の掃討艦の変遷を見ていくと、戦前からの流れを受け継いでいる事がよく分かる。


 1951年に北方部隊を基礎として自衛隊が発足すると、北方艦隊に在った艦艇だけでなく、本土において巡視船として活動していた艦艇へも再武装が施されることになった。


 ただ、海上保安庁所属のままとなった巡視船籍のものについては、主砲の再装備は無く、57ミリ連装速射砲が装備されることになり、沙弥型では6門、江田型に至っては8門と対海賊対処に限れば非常に強力な武装を有する事になった。


 そうなった原因は今に至るまで続く朝鮮半島の混乱であり、掃討艦の系譜はここで二つに枝分かれする事になった。


 海上自衛隊に配備された掃討艦は以前の武装に復帰し、1960年頃まで新たに一部構造や装備を変更して建造が続けられることになった。


 その後、沿岸警備艦艇としての役割を担い、1978年には75式57ミリ速射砲を装備する新型艦が建造されるが、この艦では主砲を1門に減らし、後部甲板には対潜魚雷や掃海具を装備するようになる。

 75式57ミリ速射砲は世界的には大口径機関砲として紹介されることが多く、イタリアで開発された76ミリ速射砲に次ぐ西側世界の対空火器と言われることが多い。


 実際、自衛隊の巡洋艦や駆逐艦の対空火器として2~4門搭載するのが標準となっていたほどだ。


 自衛隊での主な仕様は対空火器としてであったが、掃討艦に関しては対水上火器としての役割も持っていた。


 この頃は冷戦の雪解け期でもあった事から、掃討艦の大きさはそれまでと変わらず、主に朝鮮半島情勢をにらんで高速力が重視され、ガスタービン機関が主機として採用さた軽量大出力となったことで掃討艦史上最高の38ノットにまで高速化し、高麗や大韓国の監視任務を担った。


 ちょうどこの頃、領海が12海里へと拡大され、排他的経済水域の設定や広域救難体制の構築といった環境変化があり、海上保安庁の規模拡大が行われ、ヘリ搭載型巡視船や掃討艦型巡視船の後継となる中型巡視船にも75式57ミリ速射砲が装備されている。


 海上保安庁でも中型巡視船は高速発揮の必要性はあったものの、燃料コストや整備コストを増大させるガスタービンの採用は行われず、大出力ディーゼルを用いて30ノットを達成している。

 情勢の変化もあって武装も見直され、巡視船には単装型2門が装備されることとなった。


 と言っても、75式は発射速度が毎分220発まで向上しているので単装で十分な威力を有していた。


 自衛隊においては以後、ミサイルの時代を迎えた事から57ミリ速射砲を装備する艦艇は減少し、掃討艦のみという状態となっていく。


 というのも、単装型で8t、連装型では17tにもなる75式の砲塔重量を考えると対空ミサイルを主武装とする艦艇には、ちょうど、接近するミサイルを迎撃する近接火器の装備が始まった時期でもあり、近接防御システムの重量が6~10tにもなるため、近接火器としては能力に劣る75式の搭載は敬遠され、代わってそのスペースに近接防御システムが搭載されるようになったためだ。

 

 そして、冷戦の終結を受けて自衛隊の艦艇にも軍縮の流れが押し寄せ、駿河型戦艦の退役をはじめとして多くの旧式艦が現役を退き、その分、多機能艦の配備が求められていく事になっていく。


 


 



 

  

 

 


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― 新着の感想 ―
[一言] 華寇(?)なら英米の貨物船にも海賊行為を働いてレンドリース中止でドイツ製兵器だけになっていたりして 米製掃討艦は三隻で建造中止にはならなさそうだがドイツフリゲートはミサイルや対潜能力を持っ…
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