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とある世界の日本  作者: 高鉢 健太 
オリジナル
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薄倖の中に見えた奇跡

今、空母と言えばどんなものを思い浮かべるだろうか?

きっと、多くの人にとって、横須賀に停泊する米海軍の原子力空母ではないだろうか。


原子力空母の基本要素は、重い機体を飛ばすカタパルト、「制御された墜落」と呼ばれる着艦の安全性をあげる斜めに伸びる着艦甲板、そして、離着艦の邪魔をしない舷側エレベーター。

これら全て、米国で考えられたモノと思ってはいないだろうか?

一部は英国、多数は米国。それは間違いではない。我々はそう考えていたし、米英空母の発展は他者からの技術導入ではない。


勿体ぶらずとも、既にご存じの方も居るだろう。先頃行われた、空母「信濃」の潜水調査の結果である。

信濃は大和型戦艦三番艦として起工され、戦時中の紆余曲折から空母に改造された艦である。

従来の説では、空母「大鳳」と似た艦容だったとされ、一部の証言として、舷側エレベーターや斜め甲板、いわゆるアングルドデッキだったとあるが、大和型戦艦からの改装で他に類を見ない広大な甲板を錯覚したものとされてきた。


しかし、今回の潜水調査から、証言が事実であったことが裏付られ、贋作として見向きもされてこなかった「信濃線図」が本当の姿であったと認められることになった。

しかし、この線図は些かおかしいのである。発見されたのは1995年とつい最近であり、そこに描かれた図面は米国空母にしか見えなかった。

強いて米国空母との違いを挙げれば、艦橋が大鳳と同じデザインという事であろうか。

乱暴に言えば、空母ミッドウェイの最終仕様に日本型の艦橋が載った図面と言えば分かりやすいだろうか。


私は今回の潜水調査まで、その様な空母であるとは思いもしなかった。

勿論、信濃に関する多くの資料が焼却や破棄され、殆ど残されていない事に疑問がなかった訳ではない。ただ、それを終戦の混乱による紛失や破棄命令に忠実であったという至極自然な説明に疑問の余地があるだろうか?

しかも、信濃が建造された10年先にようやく形が纏まるジェット機対応空母の形が、既に確立されていたなど、 信じろと言う方がおかしい。


だが、現実は現実である。海中に横たわるそれは、確かに舷側エレベーターとアングルドデッキの特徴を持ち合わせていた。

ただ一つ、カタパルトの存在とどの様な型式であったかは、その時点では分からなかったが、調査に協力して頂いた塩飽造船に残されていた資料を精査したところ、新たな発見があった。

これまで、呉におけるカタパルト開発は水上機用の火薬式ばかりで、空気式、油圧式は完成していなかったとされてきたが、7月の空襲で工員、研究者の大きくが犠牲となった研究棟では油圧式カタパルトが開発され、完成した二基が横須賀から回航される筈だった信濃に搭載予定だった事が分かった。


当時、回航に成功したとしても、もはや活躍の場所はなく瀬戸内海で海の藻屑となる運命に変わりはなかっただろう。

しかし、日本が既にアングルドデッキと適切な舷側エレベーターの配置を考案していた事は驚きである。

一部には大鳳にも舷側エレベーター採用の議論があったとされるが、資料は発見できていない。

あまりに未来を見透かす配置にオカルトな、ファンタジックな感覚に囚われてしまう。

一部で言われるように塩飽造船二代目が転生者だったと言ってしまえば辻褄が合わないこともない。しかし、たった一人、その様な人物が居たからといって、謎が複数存在するほどの行動が、それも、一切痕跡も残さずに可能だろうか?

いや、そうであったとしよう。ならば、原爆投下の様な悲劇は防げたのではなかろうか?幾つかのターニングポイントと言われる戦闘の状況を覆せたのではなかろうか?


転生者や預言者を肯定すれば確かに説明は出来るのかもしれない。しかし、あの悲惨な敗戦や原爆投下が防げていない状況を見ると、その様なオカルトなファンタジックな事は起きていないのだろう。私はその様に結論を出すしかない。

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