一宮飛行機の軌跡 8
F5はある種の問題児であり、戦後のベストセラーと言って良い。
対してF4はどうかと言うと、こちらは輸出されることもなく、さらに高額なためF14の大半がF5に置き換えるという決定までなされ、生産機数が94機にまで削減されてしまう。
しかし、元来からF2譲りのマルチロール機として考えられていたことから、今では少し生産機数を増やす動きもみられている。
このF4最大の事件と言えば、2017年にロシアが新型戦闘機を公開した時だろう。
その姿は一見してF4そっくりだった。
もちろん、インテークはダイバータレスではないし、主翼も若干形状が違う。機体下面も形状が異なりはするが、素人目には同じに見えて仕方がなかった。
一宮はすぐさまスホーイを意匠権の侵害と訴えたほどだが、ロシアでは相手にされず、日本の裁判所も取り合いはしなかった。
一宮はロシアに対抗するようにF4を盛んにアピールしたが、輸出する気が日本政府にないのだから、そこに意味はなかった。
F4やF5についての最近のニュースはわざわざ語るまでもないが、先年起きた中国との領土紛争だろう。
コンゴ動乱以来、日中関係は長らく疎遠であった。
当初は野党政治家を招待する事もあったが、その時の会談成果は芳しくなく、日本が徐々に左派を排除しだすと関係は薄れ、米国が電撃的に関係改善に動いても、中国側は日本との関係改善を拒絶し続けている。
何が原因かは明らかだった。間違いなく辻の裏切りである。
CIAの資料から推察すれば、辻は中国共産党に協力して左派勢力の日本での伸張に協力するはずであったが、当初の計画とは違う大暴れで日本が過剰に反応し、コンゴへ戦闘機を派遣してしまう。戦時中同様の辻の独断専行である。
この結果、執拗に対日批判を繰り返して振り上げた拳の降ろしどころを失い、関係改善の機会が無かった。
1980年代に多くの西側諸国と関係改善を図る中で、日本との関係改善も浮上したが、そこには尖閣諸島問題が存在し、辻の例から中国側では対日交渉に消極的になっていた。
「協力を申し出た辻が裏切り、釣魚島の件で共産党が裏切り、社会党は全く動かない」
それが当時の中国共産党幹部の対日観だった。政府と対話してもどうせ日本人は裏切る。そう見られていた。
そして、天安門事件以後、西側諸国と関係悪化が長期化すると、日本へと近づこうとしたのだが、今度は自国内に問題が発生していた。
あまりに反日を強調しすぎたために、対日政策では日本へ妥協できなくなっていた。仮に日中国交正常化などしようものならば、担当した外交官や主席は政治生命を失いかねないまでになっていた。誰がそんな貧乏くじを引きたいだろうか?
そのような状況で経済発展は遅々として進まず、支援してもらえる国もなかった。
日本と国交を回復した韓国が大きく発展し、中国へも進出すると状況は好転するが、それでも焼け石に水としか言えなかった。
21世紀を迎えて徐々に欧米諸国が中国との関係改善に動くが、一度失ったモノを取り返すのは非常に大変だった。
何とか経済成長が軌道に乗り、党の威信も回復した2016年、初めて日本と友好条約締結に向けた公式会談を行うのだが、コレが中国国内で反日デモに火をつけてしまう。
かといって、欧米や韓国の投資で上向いた経済を天安門事件の様な弾圧で再び失う訳にも行かず、交渉打ち切りを宣言して何とか事態は沈静化するかに見えたが、翌年には尖閣諸島への渡航問題が発生し、あろうことかそんな時期に日本が台湾との兵器輸出交渉を始めるに至る。
引くに引けなくなった中国では、尖閣諸島への海上警察駐留を実施するという、国民に押される形での強硬策を打つしかなくなった。
水面下で日本との折衝を続けていたが、2018年3月21日には一部中央の意を無視した軍部が尖閣諸島海域へ侵入し海上保安庁の巡視船を銃撃排除した事から、紛争に至ってしまう。
那覇や下地島基地に配備されたF3やF14がこれに呼応して現場へ向かい、中国軍と交戦に入り、22日には新田原からF4が現地へ派遣された。
この2日間の空戦で中国軍は一切抵抗できず、パーフェクトゲームを献上するだけに終わってしまう。
中国側は尖閣諸島に海軍艦艇を更に集め、実効支配を始めようとするが、24日昼に上海にF4戦闘機4機編隊が現れて何の抵抗も受けずに曲技飛行をして去っていく事件が発生した。
その姿は多くの観光客や市民が撮影しネットで拡散され、共産党が制止する間もなくテレビでも流されてしまう。
明らかに「F4ならば中国軍の妨害を受けずにどこでも攻撃できる」という日本側の脅迫だった。
その事実を突きつけられては戦争継続は困難だった。下手に拡大すれば欧米との関係まで失う、これでは停戦せざるを得ず、穏健派主導で停戦合意がなされるが、この紛争で日本の対中感情は最悪となってしまう。さらに、これまで共産党が続けていた反日姿勢が多くの中国国民の反感を買って政情は混乱、経済的に豊かな沿岸部が独立すらほのめかす事態となり、70年前の内戦を思い起こさせる状態がそこに出現してしまっている。
そうした対岸の情勢はあるが、日本自体はいたって平和だ。F5戦闘機は日本だけでなく米空軍やNATO各国にまで採用され、日本、米国で生産されている。
そして今年、九四式戦闘機がガルフストリームから発売となった。
何を言っているのか分からないと思うが、私も何を聞いたのかよく分からなかった。しかし、それが公式アナウンスなのだから仕方がない。
ガルフストリームが発売した九四式戦闘機は実機より小さい軽飛行機に分類されるカテゴリーとなっている。
この機体は九四式をそのまま小さくしたような機体で、エンジンには桜花に採用された呼11を現代技術で再設計したものが搭載されている。
一宮USAが開発した新型水平対向4気筒エンジンを動力に燃焼器も備える事で一応、ミニジェットという分類になっているが、ほぼ離陸にしか燃焼器を用いないので実際にはレシプロスポーツ機の一種と言って良い。外見はジェット機だが、整備性はレシプロ機と同じで、価格も変わらない。
なにより、タイプ94Fというネーミング自体は一宮忠吉の置き土産だと言い、設計も彼が死の間際に完成させたのだと言われている。
呼式機関にカーボンを利用して軽量化を図り、エンジン技術の進歩で高出力化も成し遂げている。更に構想としてモーター駆動の電動式モータージェットまで計画していると言うから、何がしたいのか分からない。
この機体は忠吉の趣味によって作られ、一宮USAの収益が堅調だからこそ作れる贅沢品と言って良いのだが、航空免許さえ取れば高級欧州車より安いと聞いたらどうだろうか?
さて、一宮忠吉と一宮飛行機について述べてきたが、忠吉がX2開発時に放ったとされる言葉は多くの証言がある。
「ラプタン」
今ならそれが何を指すか分かるだろう。多くの者にとってこれがF22ラプターを指すという事は周知の事実だ。
そして、彼が逆行転生者だと言われる所以でもある。
その事実を信じるか信じないかはあなた次第だが、私は夢に掛けてみたいと思っている。




