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とある世界の日本  作者: 高鉢 健太 
オリジナル
3/130

アリサカを超える者

いいのか?これで・・

1930年代、それは世界的な自動小銃開発ブームであった。

自動小銃の初端はロシアで開発されたフェドロフM1916だろう。

この小銃、初の自動小銃でありながら、既に後のアサルトライフルの要素を備える銃であった。

この小銃は日露戦争の塹壕線から、将来の戦争においては敵塹壕の後方まで侵攻する必要があり、その為には、敵機関銃と撃ち合える小銃を突撃部隊に配備する必要性から生まれたのである。


ただ、その為に構造は当時の機関銃と同じ方式となり、命中精度では小銃としては見劣りした。

その為、ソ連は1930年代の自動小銃開発では、この方式を採用していない。


この当時試作された自動小銃の多くは装填を自動化した半自動小銃が多く、機関銃の様に連射を前提にするものは少なかった。

それは、当時の小銃弾が威力が高く、軽量な小銃では連射制御が難しく実用的ではなかったことにある。

小銃弾で実用化した小銃にはドイツのFG42やアメリカのM14があるが、連射での扱いが困難だったと言われている。


フェドロフ小銃はというと、当時としては反動が小さい三八式実包を採用していた。

その銃弾を使用していた日本はどうだったかと言うと、流行に乗り開発を行っていたが、参考にした小銃は米国のピダーセン小銃という複雑精緻な品であり、連射すればすぐさま銃弾を消費するため、当時の兵站能力では維持が困難だった。

機構の問題、命中精度、兵站のすべてにおいて満足できるものではなく、採用されることはなかった。

そして、中国戦線での戦訓から口径拡大へと舵を切ったことで忘れられた存在となっていた。



ところが、俄にその状況が変わる。

欧州で戦争が始り、ドイツが空挺作戦を成功させたことに刺激を受けた軍はまず、新聞社から米軍の写真を取り寄せ研究に入った。

その時、兵員が携行したまま降下できる分解式又は折り畳み式小銃の開発計画が出されることになる。

三八式や九九式小銃を簡単に分解梱包出来るように試行錯誤が為されるのを横目に、一人の軍人が画期的な小銃を提案する。


それは銃把握より後方に機関部を持つブルパップ式と呼ばれる構造で、当時としては特異な構造だった。当然、自動小銃であり、使用実包は三八式である。


この銃の特徴はブルパップ式とすることで長さを短縮した上に銃身長も騎兵銃並に短縮し、全長を70センチ以下に押さえたことにある。これにより、他の分解式小銃の分解時と同じ全長に収まり、そのまま携行して降下できる様になった。

更に、空挺部隊の火力を補うために擲弾筒を小型、軽量化した新たな銃器も発案している。これは銃本体をアルミで構成し、40ミリの専用擲弾を用いるものだった。偶然だが、そのサイズはNATOグレネード規格と同じ40x46ミリである。

これを小銃下に装備した擲弾兵を分隊に配置することで、飛躍的な火力を産み出すことができた。


1940年中に試作が終わり、折から編成途上であった陸海軍の空挺部隊に配備されていった。


当初は試製空挺銃と呼ばれていたが、制式化され、二式空挺銃と二式空挺擲弾筒となる。


ただ、連射が可能な自動小銃であること、既に旧式の三八実包を使うこと、更には一般の小銃とは取り扱いが全く異なる事から空挺部隊以外には配備されることなく、多くの銃は倉庫で眠りについていた。


そして、一部は地下に疎開された上で忘れられており、その構造が特異で、専門の訓練を受けていない一般兵には取り扱いが困難な事から、戦争末期に至っても前線に持ち出されず、あるものは土中へあるものは鉄屑として再利用され、幻の小銃と呼ばれていた。


それが最近、朝霞駐屯地の建物建設のさいに土中から発見され、はじめて全容が解明されることとなった。


二式空挺銃の内部構造は、米国のM1カービンと同じショートストロークガスピストンを採用し、ピストンやシリンダーにメッキ加工を施すことで腐食を抑えていた。

銃本体はAK47のように余裕のある寸法とすることで、当時の日本でも容易に生産可能な構造であった。

二式空挺銃の調査に参加した専門家の多くは、「ブルパップ式を通常型に改めた型を開発していれば、ドイツのStG44や米国のM1カービンと共に歴史に名を刻んだかもしれない」とその内部機構や設計思想を評価している。

ブルパップ式小銃としては初期の銃であるにも関わらず、後に実用化された銃に見られる様々な対策が既に盛り込まれており、完成度は非常に高い。


二式空挺擲弾筒についても、構造は米軍のM203に酷似しており、実用性に問題はないとされている。

調査に参加した米国専門家が、試しにM203を使用して実射テストを試みたが、弾薬の不具合で不発に終わっている。


現在、資料は一般にも公開されているが、あまりに時代を先取りした外観や洗練された内部構造から、ネットやオカルト系では未來人が持ち込んだ小銃と擲弾筒と騒がれている。

これらを設計した軍人は戦時中行方不明になっており、噂に更なる話題を加えている。

個人的にブルパップが好きなだけだよ・・・

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