森のクマさん
現実逃避がてらに
悲鳴が聞こえてきたのは草原フィールドにいるボス二体のうちの一体、森の主、『ハングリーベア』がいる森の中からだ。
街道から動かないもう一体のボス、『ゴブリンジェネラル』に対し、ハングリーベアは森の中だけだが、徘徊系のモンスなので、もしかしたら運悪く出くわしたプレイヤーがいるのかもしれない。
「どうする、助っ人に行くか?」
「いや、戦闘をほとんどしてない俺たちが行ってもデスぺナ食らうだけだろうし...あ、でも初回デスぺナ免除があるから行ってもいいか」
我ながら人助けの精神が皆無だと思いつつ、今回は戦闘の経験と森の地形の把握、ボスモンスの動きを知れるチャンスなので行くことにする。
「素直に助けようとは思えない自分が情けない」
「ゲームだし打算ありきで動くのが普通だって」
森の中は足場が悪い上に視界も悪く、これで戦闘をしないといけないことを考えると先が思いやられる。
そんなことを考えながら進んでいくと木の上から攻撃された!
「猿系のモンスが上にいるぞ!どうする、無視するか?」
「いや、これでモンス連れてトレインになるほうが悪い、倒していくぞ」
「それもそうだな。で?スイエンの時は確か木を揺らして落とそうとしても駄目だったんだっけか、どうするんだ?」
「あぁ、でも今は二人だし別の木に飛び移ったらそれを揺らしてくれ」
「あいよ!」
まずは木を棍棒で思いっきり殴る。すると案の定別の木に飛び移ったので、その木にケンケンが思いっきり飛び蹴りをくらわすと、猿はバランスを崩し落ちてきて...地面に叩きつけられた瞬間に粒子となって消えた。
「なんだ、落下ダメージだけで倒しちまったのか。俺らの初戦闘が速攻で終わっちまった」
「これを戦闘と呼んでもはたしていいのか疑問が残るが助っ人に急ごう」
「そうだな、これをノーカンとして初戦闘はボスモンスだってことにしよう」
悲鳴がいまだに聞こえるのでまだ倒されてはいないのはわかるが...
「あ、魔物鑑定すんの忘れてた」
ま、まぁ急いでるわけだし後でできることだし別にいいか...もったいない。
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進んでいくうちに悲鳴が大きくなっていき、そして見えたのはやはりハングリーベアと戦うプレイヤー達だった。プレイヤーの人数は四人だが全員余裕がなさそうに見える。
本当は他人が戦ってるモンスに手を出すのはマナー違反だし、こういう場合は観察だけにとどめたいが。
「助っ人に入ってもいいか!」
「お、お願いします!」
さて、了承も得れたので戦闘開始と行こうか。
俺らが戦闘に参加するとハングリーベアは俺らを認識するなりいきなり俺らに引っかき攻撃をしてきた。
何とか躱したが、今の俺らが食らったら即死だろ、絶対
「どうする?こいつは森から出られないし逃げるか?」
「そうなんですか?じゃあ逃げましょう!今すぐ!」
「命大事に!」
「アイテム尽きたしそれがいいですね!」
「デスぺナ免除があっても死なないのが一番ですしねー」
「やっぱボスを倒すなんて今は無理かー」
攻撃を加えてみたが全く効いてないのもあり、満場一致で逃走することが決定した
「殿は俺がするからケンケンは四人を守って!」
「了解!さぁ、こっちが最短ルートだ!」
ケンケンはアホの子だが道なんかは一回で覚え、最短ルートをすぐに割り出せる。本人曰く、イベントで買いたいものを全部買うなら、必須スキルなんだとか。
だが、ハングリーベアは逃げる俺らを簡単には逃がしてくれない。慣れてない森の中というのもあり攻撃を掠めること実に7回、掠めただけでゴリゴリ削れていき、HPがやばくなったがやっと森から出れそうになった時、
『GAAAAAAAAAAA!!!』
ハングリーベアは咆哮を放った。
それによるデバフなのか、俺たちは硬直し一瞬動けなくなった。その結果、全力疾走するハングリーベアは俺たちにそのまま突っ込んできて、俺は跳ね飛ばされ、吹っ飛んできた俺に押される形で他のみんなは森の外に出ることができた。
この戦闘で、HPが全損してもプレイヤーは数秒間、操作はできないがその場に当たり判定有りで留まることと、ハングリーベアの咆哮には一瞬プレイヤーを硬直させるデバフがあることがわかった。
と、俺は死に戻りをしながら考えを整理するのだった。
...また鑑定忘れてた。
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PN〈ヒエン〉人族Lv1→3
パートナー〈スイエン〉アクアモンキーLv1
STR 20
VIT 15
AGI 20
INT 15
MND 15
DEX 20
SP残り5→15
残りAP5/残りAS1
戦闘≫〈棍棒Lv1〉〈盾Lv1〉〈鎧Lv1〉〈火属性魔法・初級〉
生産≫〈料理Lv1〉〈修理Lv1〉
生活≫〈鑑定・鉱物Lv1〉〈鑑定・植物Lv1→2〉〈鑑定・魔物Lv1〉
〈地図作成Lv1〉
称号≫『献身する者』NEW
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NEW:初回デスペナルティ免除を使った
:称号をゲット