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ある天気の悪い日の物語

作者: 石田杞憂

僕は天気によって気分が変化する。

僕に限った事じゃないと思うけど、やっぱり曇りだと気分も晴れないし、

快晴だと思わず外に飛び出したくなる。

小説なんかだと主人公の心情が天気になって現れるけど、まぁ、そんなもん。

だから僕はモーッアルトを聞きながら椅子に座っていた。

ただぼぉーっと何かを考えていた。

だけど――窓が割れるような高音がして僕は現実に戻った。

「なんだなんだ?」

両親共に海外出張で家には誰もいない。

なのに、窓が割れる音。

僕は背筋が凍るのを感じた。

震える手で近くにあったテニスラケットを持ち、

音源に向かう。

僕だって好きで行くわけじゃないけど一時的にも家を預かる身として、

責任がある。

僕はおそるおそる居間の扉を開けて、

「なっ」

そこで、この家で一番大きな窓が割られているのに気付いた。

「これは、やばいな」

誰かが進入してるにも関わらず修理代の事を考えてしまう。

しかし、カサッと微かな音がして僕は身を引き締めた。

誰かいる。間違いない。

僕は慎重に部屋を見渡して、

「……」

テーブルの下に何かを発見した。

「ボクじゃないよ、ボクじゃない」

侵入者はそう呟いていた。

「わっ」

「きゃあ」

ゴンと鈍い音がして侵入者は思いきり頭を打ちつけた。

自業自得だ。

「お前……」

「ボク、キミの幼なじみなんかじゃないよ」

幼なじみだった。

「そうか、なら犯罪者ってことで警察に」

「ダメだよぉ。女の子は助けなきゃイケナイんだよぉ」

そいつはいった。以下(馬鹿)を呼称とする。

「おい馬鹿」

「馬鹿なんてひどいよ」

「何で窓を破る必要があった」

「玄関が開いてなかったから」

「何故チャイムをならさない」

「窓からの方がかっこいいと思って」

ゴツンと一発。

「いたいよぉ」

「それで」

僕はめちゃくちゃに割られた窓を指さした。

「何とかしろ」

「うっ……わかったよ」

馬鹿はズボンのポケットから指揮者棒みたいなのを取り出して一振り。

すると窓の破片はゆっくりと上昇し、キラキラと光を反射しながら繋がり、

やがて一つになった。

まるで巻き戻しを見ているようだった。

「へぇ、すごいな」

「えへへ」

そう。コイツは何を隠そう、

世界でも希少の『魔法使い』だった。ただ……

ボンっ。爆発音。


気付くと、

僕の足下には、かつて家を構成していた炭があった。

頭に血が上るのを感じた。

「…………殺す」

「うわぁ、ダメだよ、女の子に」

「こらあああああ」

家は跡形もなく消え、白い便器が無惨に残っているだけだった。

「このおちこぼれがぁー」

「いやああああ」

それから、僕たちは全力で追いかけっこ(必死)をしたのだった。


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